手掛かりを追い
何も届かない。何の情報もないわ。視界は暗闇に包まれていて、音も何一つ聞こえない。
いや、そんなことないみたい。今確かに向こうから、助けを求める声が聞こえたわ!ならば私は向かうまで、すぐ助けに行くから待ってね。
私が目覚めたところは、やはり暗闇だった。でも光が見える。私はその微かな光に向かって進んで行った。
「貴方は、誰?そこで何してるの?」
私が歩いていると、その場に人を見つけた。腰ほどまでの緑色な髪の毛を乱して、ふらふらと歩いている少女かな。恐らく十歳位かしら、ね。
「まどかは、村上まどかなのです。助けてくれると嬉しいなのです」
助けを求めていたのはこの子なの?
「助けるって、何をすればいいの?ここは、どこなの?」
「ここは、まどかの町だったなのです。少し前に怖い奴らがやって来て、全部全部壊していったなのです」
まどかと名乗る少女は、悔しそうに顔を歪めた。
「怖い奴ら?そいつらは今、どこにいるの?」
どんな奴か、確かめてみたいわ。
「分からないなのです。お姉さんの、お名前を教えてなのです」
私の名前?ええ、教えてやろうじゃない。
「小鳥遊陽香よ。陽香でいいわ、貴方のことをまどかと呼んでもいいかしら?」
「はいなのです。陽香お姉ちゃんは、まどかを助けてくれるなのですか?」
助ける、どうやって?
「町を、戻したいなのです。ある石の力で、動いていた町なのです。だからそれを奪われ、町は崩れてしまったなのです。石をまどかと一緒に、取り戻しに来てくれないなのですか?」
石?それを取り戻せば、”あの時”みたいなのも見られるのかな。
「分かったわ、行きましょう。その石というものを、取り戻すためにね」
この少女のこと、信じていいのかしら。今の段階じゃそれは分かりかねる、でも協力するわ。この少女は心から、助けを求めていたから…。
「とにかく準備しないとなのです。食べ物とか武器とかもないと、何にも出来ないなのです。陽香お姉ちゃん、行こうなのです」
まどかは私の手を握り、どこかへ向かって歩き出した。この純粋無垢な瞳、私を騙して利用しようという子ではなさそうね。
「ちょっとなら、食べ物は持ってるよ」
手に持っているバックに、おにぎりが何個かあるはずだわ。でも元々人間界なんて、暗闇から逃げるために来ただけのものだった。なのにこの少女に会ってしまって、中々帰れなそうね。んーまあ、この子の言う怖い奴って言うのが魔王って可能性ももしかしたらあるかな?ならいいわ、賭けてみようじゃない。そう、魔王の手掛かりだと思えばいいのよ。
「陽香お姉ちゃん、食べ物持ってるなのですか?でも旅するにはきっと、いっぱいいっぱい必要なのです。どうしようなのです」