死体の山を
「おれのことも殺すのか? それは別に構わない、でも兄ちゃんの上から退きやがれ! 最低だ、兄ちゃんは何も悪いことしてないのに」
あっ……! 私の足掛けやがったこの死体の、弟ってことね? でも早く行かないと、村人たちがもっと沢山殺されてしまうわ。
「殺したのは私じゃないわ。それよりも早く、早く他の人達を助けに行かないとならないわ! 貴方だって分かるでしょう? 今ドラゴンが暴れているのよ、早く止めに行かせて頂戴」
私の説得によって、やっと少年は理解してくれたようだ。はあ、今からで間に合えばいいのだけれど。
「そうだったのか、すまない。早く行ってくれ、皆を助けに」
こいつのこの行動、精神が不安定な上ガキだったからまだ許せたけど……大人だったら殺してたわ。
いや、そんなこと考えるもんじゃないわね。私は全力で走り、逃げたドラゴンを探す。
「ガオー、ガオガオー」
鳴き声、ドラゴンの鳴き声だわ。鳴き声が聞こえた方向へと走って行くと、物凄い量の死体の山が……。そしてその頂点には、偉そうにドラゴンと魔物が立っていた。絶対に、絶対にぶっ殺してやる……!
「ガオ?」
死体の山を踏み付けながら、私はドラゴンへ向かって歩き出した。元々血だらけの状態だったので、今更汚れなんか気にしなくて済むわ。そんなことを考えることで、私は死体を踏み握っているという意識を薄めようとした。
「ガーオー!」
普段通りの可愛らしい鳴き声で、ドラゴンは私に向かって火を吐いた。そんな攻撃、私が喰らう筈がなかった。ドラゴンは魔物の下程度、いくら今の私は弱っていると言えども負けないに決まっている。




