悲しいストーン
「凜子さんの目的が、分かったかもしれません」
え? 悠馬は静かに、だけど確かにそう言った。凜子って、あの魔王よね? 目的って何よ。
「私にも教えて頂戴」
てっきり断る思っていたけど、意外にも悠馬は頷いてくれた。教えて、くれるのね。
「凜子は恐らく、平和を目指しています。僕達とはやり方が少し違いますが、平和な未来を望んでいるようです」
平和を目指している? 平和を望んでいる? だとしたらどうして、こんな酷いことをするのよ。
「戦や罪に満ちたこの腐った世界を滅ぼし、新しい世界を作り出そうとしているのですよ。それに凜子は確かに、改革を進めているようです。どうしますか? 凜子について行ったとしても、戦の先に未来はあります。今の腐った世界を守るか、新しい世界に掛けるかですね」
新しい世界? 笑わせないで。それに平和を望んでいるような人が、笑顔で人を殺す訳ないじゃないの。
「少なくとも私は、笑いながら人を殺せるような奴について行きたくない。今の腐った世界で十分よ! もうこれ以上死なせたくないの」
でも戦いをやめて凜子に降伏させれば、死者は減るかもしれない。でもそんなのは違う、平和なんかじゃないわ。それに誰もが、素直に降伏するなんて有り得ないわ。
「そうですか、僕は陽香さんについて行きます。それと凜子の事なのですが、妖精とストーンを集めていますよね?」
ふぇ? そうでしょうよ、だから私達は旅をしてるんだもの。
「盗んでるんでしょう? 力を手に入れて、新しい世界の支配者にでもなるつもりなのかしら」
それだけの力があれば、確実に最強となれるわ。神の力が、手に入るのだからね。
「はい、恐らくそうでしょう。しかし結構な悪行を働いていますし、ストーンの使用は出来ないかと思います。つまり彼女は、抵抗する力を無くすためにストーンを集めているのですよ。もしくは、ストーンを悪の色に染めてしまうかですね」
そうか、ストーン自体を悪の色に染めてしまえば使えるわ。
「ねえ悠馬に質問よ。”dark stone”って、そんな簡単生み出せるの?」
まあ簡単ってことは、ないでしょうけども。
「人の魂です、殺した人間の魂。それと血ですね、それでストーンは穢れて行きます。今も一つだけあるそうですよ? ”dark stone”となってしまった、悲しいストーンが」




