妖精の為
「突然待ち合わせ場所と時間を変えると仰るので、私も驚きましたわ」
待ち合わせ場所と時間、悠馬が変えたのかしら。それってもしかして、私が疲れたって言ってたから? だとしたら、優しいところもあるのね。
「ああ、すみませんね。しかし僕も、無事に会えたので良かったです」
私達は、大きめの家に案内された。そして座らせられ、お茶と茶菓子を出して貰った。金持な村ね、客にそんなもの出せるなんて。
今時他の村では、水の奪い合いをしているんじゃあないかしら? お茶だなんてとんでもないわ。
「こんなものしか御座いませんが…」
望海は上品に微笑み、私達の向かいに座った。
「望海さん、魔王の部隊がこの村を狙っているのは知っていますね?」
悠馬が行き成り本題に入ったことに驚いたのか、望海の笑顔が多少崩れた。しかし直ぐに、微笑み直す。
「ええ、スターちゃんから聞きましたわ。それと、仲間が捕らえられてるとも仰っておられましたけど…」
望海は不安そうな顔を、私達に向けて来た。何だか物凄く、顔作ってる感があるのだけれど…気のせいかしら?
「はい、魔王は妖精と捕まえているようですね。僕もその話は聞いています」
でも悠馬って、誰にそんな話を聞いてるの? 私はそう訊こうと思ったのだが、口が開かなかった。どうゆうことよ、どうしてなの…?
「黙ってて下さいね」
笑顔で私の方を向き、小声で悠馬は言ってきた。貴方の仕業なの? 貴方のせいで、私の口は開かないの? でもそう言ってるんだし、そうするしかないわね。
無理に逆らって暴れたりしても、私に全くもって得はないわ。少しくらい話せなくたって、別に構わないじゃないの。それに、話を聞くことは出来るんだからさ。
「どうかなさいましたこと?」
不思議そうな表情で、望海が私達に訊いてきた。やっぱり何だか、表情を作っている感じがするのよね。
「いいえ、何でもありませんよ。それよりも、妖精を助ける方法を考えましょう」
微笑みを消した真面目そうな顔で、悠馬はそう言った。妖精を助ける、確かにそれは必要なことよね。
「あたしが囮になってあげてもいいけど?」
どこかから高く子供っぽい、何だか腹が立つような声が聞こえてきた。
「ハロハロ~、あたしスターちゃんよ」
青く胸元程までの髪、右側を一部だけ大きな星の髪飾りで結んである。何だか元気が良さそうな顔に、細く鋭い青く透き通った羽。それに小さな体であったので、本当に妖精であるのだと思う。




