歩き疲れて
私は妖精を信じて、歩き続けた。
ー三十分後ー
はあ、疲れて来たわね。何時間歩いたかしら。
ー更に二時間後ー
もう着いてもいい頃じゃない? 悠馬が言ってた時間、間違ってるんじゃないかしら。てか太陽は、どうして一日中昇りっぱなしなの? 分かったわ、白夜とかいう奴ね。きっとそうよ、そうに違いないわ。
ー更に一時間後ー
「ねえちょっと、まだ着かない訳? 休憩取れないのは分かったからさ、もうちょっと待ち合わせ場所を近づけて頂戴」
意味分からない、いつまで歩かせとくつもりなのよ。何か…、瞬間移動みたいなのできないのかしら。
「まだまだですよ、陽香さん。距離ありますし、もう少しペースあげますか」
ええ!? 何でそうなるのよ、バカじゃない!?
ーその三時間後ー
「うぅ、休憩しましょ」
遂に私は、力尽きてしまった。何日歩いた? ねえ、何日歩いたと思ってるの? もう無理、限界だわ。
「仕方ありませんね、食事にしましょう」
悠馬はあの肉を取り出し、私に差し出してきた。また食べるの? でもまあ、お腹空いてるし仕方がないわよね。
仕方な~く、私はあの肉を頬張る。疲れてるせいかしら、少しだけ美味しく感じてしまうわ。
「余程お腹が空いていたんですね、でも食べ過ぎはしないで下さいね。それはそれで、歩くのが大変になってしまいます」
分かってるわよ、五月蝿いわね。私は肉に齧り付き、肉が不味くなってきた頃に食べるのをやめた。不味くなってきたということは、通常に戻って来たということなのだから。そして通常に戻ったのだったら、その状態で歩けばいいわ。
「あっ、食べ終わったようですね。陽香さんが満足でしたら、もう一度歩き始めましょう」
私は立ち上がり、歩きながら考える。『もう一度歩き始めましょう』って、何の歌詞なのかしら。
ーそして二時間後ー
「ここです!」
悠馬は嬉しそうに、目の前の村へと駆け寄って行った。これが、穴見村ってところなの? 普通の村に見えるけど…。
「あっ、貴方が陽香さんと悠馬さんですね。ご案内いたします」
門番らしき人に招き入れられ、私達は村の中に入る。やっぱり、普通の村だわ。
「ようこそいらっしゃって下さいました。私は村長の藤ヶ谷望海と申します」
二十歳前後だと思われる、長い金髪の女性が現れた。村長? へえ、こんな若い人なんだ。




