待ち合わせ
「彼女のお気持ちを、少し伺わせて戴きました。目的地は恐らく、穴見村でしょう。別の道を通り、先回りすることも出来ますが? 陽香さん、どう致しましょう」
どう致しましょうって言われてもね? でもまあ、先回りして待ち伏せは大好物よ。
「じゃあ、そこに行ってみましょう」
でも私は穴見村って村、名前を聞いたことすらないんだけれども…有名な所なの?
「ねえ、穴見村ってどんな村なの? 遠いところかしら」
「では歩きながら、ご説明いたしますね」
悠馬は右に曲がり、どんどん歩いて行く。私もそれに続いた。
「穴見村と言うのは、”star stone”がある村です。その為、星の村とも呼ばれています」
星の村? 全然知らないわね。まあstar stoneのことは知ってるから、そう呼ばれてるとこがあるとは思ってたけど。
「寝ずに歩き続ければ、一日で着くことも出来るでしょう。そこまで遠くありませんので、心配は無用です」
そこまで遠くないって、一日歩き続けられる筈ないじゃないの。本当にそれが、心配無用な距離?
「stoneの存在どころか、村自体も隠されていると聞きました。だから恐らく、そう簡単に辿り着かれはしないと思いますよ。僕は場所を知っていて、招かれたものなので安心して下さい」
招かれたもの? どうゆうことなのよ。
「確かに魔王の軍隊のような招かれざる客は結界によって通しませんが、一般の客の場合は結界を外してあるそうですよ。そして僕達のように招かれた者の為には、姿も映されるそうです」
貴方や私は、その村に招かれているというの?
「だってその村は、日々移動を続けてますから」
移動を続けている? 村単位で?
「ちょっと待って、だったら距離なんて…」
「いいえ、位置情報を伝えて貰っています。そして穴見村と、待ち合わせを決めています。だから僕は、一日で着くと言っているのです」
村と、待ち合わせ? 無茶苦茶だわ、貴方は何者なのよ。
「だったら待ち合わせ場所を、もうちょっと近くに出来なかったの?」
むしろ村が動けるんなら、迎えに来て貰えばいいじゃないの。
「僕達に近いということは、先程の部隊にも近いということです。それに村ですので、移動にスピードは出ません。安全で最速、それが今回の待ち合わせ場所なのです」