楽しいお料理 2
「陽香さん、先に食べていていいですよ」
葉っぱに盛り付けられた肉、これだけを見ていれば普通に美味しそうに見えるわ。私は後ろのモンスターを見ないようにして、肉を一切れ口に入れた。
口に入れた途端、蕩ける様に消えていく。何て美味しい肉なの? 肉汁が溢れて、ああまるで…。やっぱ無理。
どんなに美味しいと思い込んでも、柔らかい肉だと錯覚させようとしても。想像さえ広がらないわ。だってこれ、噛み切れもしないほど固いんだもん。
「あっ」
悠馬の声が聴こえてくる、そしてそれと同時に私に赤い液体が降り注いだ。
「ごめんなさい、ちょっと跳ねちゃいました。普段そんなに料理しないから、…大丈夫ですか?」
ちょっと跳ねちゃっただぁ? どこをどうしたら、これがちょっとになるのよ。
「新しい洋服、こいつの皮で作りましょうか? それで…」
「結構よ、このまま行くわ。いいから貴方は料理を続けて頂戴」
私偉い、怒らなかったわ! でも血の臭いがするのは、さあどうしましょう。
「ありがとうございます、今度は気を付けますから」
右手の上にまた何かを作りだし、血だらけの顔で悠馬は微笑んだ。別に、怖くなんてないんだからねっ!
私は血の味がしっかりついた肉を、頬張り続ける。えっと、何かのソースだと思えばいいのよ。
「臓器とかも、調理すれば食べれるんでしょうか」
はあ? ふざけんじゃないわよ、さすがにそれは耐えられないわ。お願い、臓器は勘弁。だって普通の動物の奴だって、私には耐えられないんだもの。
「知らないわよ、いいから”肉”を出して頂戴」
そんなのを食べるくらいなら、この硬くて不味い肉を食べてた方がずっとましだわ。だって肉の方は、そこまで見た目可笑しくないもの。まあ味は…、酷いけど。
「分かりました」
ええ、素直で宜しい。でもまあこの肉だって、死ぬほど不味いけど。私がやっと一皿完食できそうになった時、悠馬は追加の肉をよそって来る。それが繰り返されて私は、満腹まで食べることが出来た。
「私はもういい、あとは自分で食べて頂戴」
「はい、ありがとうございます」
ああ不味かった、満腹満腹。
「おお! 美味しいお肉ですね」
はあ? 何言ってるの? 悠馬貴方、味覚がどうかしちゃってるわ。




