表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”二章” 凜子を追え 悠馬との出逢い
19/150

絶望の叫び

「本日私は、お客様の為に特別な道具をご用意いたしました」

 特別な、道具…? 何だって言うのよ。

「これです。これが何だか分かりますか?」

 えっと、クルミとかを割るやつよね…。でもクルミにしては、少し小さいわ。それは何? それで、何をしようって言うの?

「使い方は簡単です。私が見本を見せますので、よ~く見ていて下さいね」

 魔王はまどかの右手を掴み、動くことも出来ずにいるまどかの、右手の親指の関節をその道具で挟む。

 そして取っ手を力一杯握る。嫌な音とともに、まどかの指は可笑しな方向に曲がった。

「ぎゃ~っ!!」

 まどかは苦しそうに、泣き叫ぶ。ああ、痛そう。

 魔王のその道具を外されたまどかの指は、変な色に染まっていく。私の予想とは反して、赤ではなく青緑色になっていく。そしてそれを、まどかは痛そうに左手で押さる。

「ねえ? 簡単でしょう。それでは、お客様もどうぞ」

 あんな酷いことを、やれと言うのね…。ああ、いいでしょう! もう私はまどかを見捨てたのよ、これをやらなくても酷いってことは変わらないわ。

「まず僕がやります、陽香さんは待ってて下さい」

 悠馬…。少し声も手も震えているが、悠馬は魔王から道具を受け取った。そしてそれで、まどかの右手の人差し指を挟む。 

「そのまま、力入れるだけでいいんだ。ひゃっはっはっはっは!」

 敬語や少女の姿はなくなり、完全な魔王の姿となっていた。

「分かりました、行きますよ」

 悠馬は両手を駆使して、一生懸命それを握りしめる。

「きゃあ~!! やめて~!!」

 頑張って力を入れると、それに比例してまどかの叫び声も大きくなってくる。まどかは泣き叫び、左手で悠馬の手を払おうとする。

「へえ、根性あるなあ。それともただ、最低なだけなのか。しっかし、そんな本気で握るとは思ってなかったぜ。あっはっはっは、それが人間か!」

 魔王は、不愉快に笑う。まどかの鳴き声も聞こえなくなるくらい、魔王の笑い声は私の頭に響き渡る。

「次はお前の番だ、順番だろ?」

 悠馬から受け取ったあの道具を、今度は私に渡してくる。どうしよう…、私にあんなこと。

 確かに私は非道だけど、勇気はないわ。力なんて、入る訳ないじゃないの。

「ええ、分かっているわ」

 明らかに怯えながらも、私は魔王から受け取る。

「きゃっ」

 しかしその感触にすら驚き、それを落としてしまう。

「どうしたんだ? 落としたりして。まあいい、手が滑ったのだろう」

 幸い私を咎めはせず、それを拾ってもう一度渡してくれる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ