全ては私のもの
どれほど説得を重ねたところで、私の言葉が届くことなどないようだった。だから仕方がなく、私は力に訴える道を選んだの。そうしてでも、止めないといけないから。その手段を取れば最悪の事態も考えられるけれど、私はそれでも、力づくにでも止めないといけないと思った。
神が他の神を罰するというのは、たとえ相手が禁忌を犯した神だとしても、反対意見が多数出た。悪事の絶えない外界の影響か、神の中でまで分裂し始めている。私はいつだって梨乃の意見に従いたいと思うし、梨乃はいつも私の意見を取り入れてくれる。そして羅刹は、私たちに着いてきてくれるのだった。
最近は、羅刹から悲しげな笑顔が消えた。本当に幸せそうな笑顔を浮かべてくれるようになったのである。この変わりゆく時代の流れの中で、羅刹は笑顔を見つけていたのかしら。周りがいくら変わっても、私は変わらずに、あの人の気持ちを守りながらも生きてきた。
これが本当に平和なのか。私たちが追い求めていた平和なのか。ときどき、そう思ってしまうことがある。しかし、私が望んでいた世界であることに変わりはない。どんなときでも陰で私を守っていてくれた、あの人がもういない世界。あの人の支配下にない、私が暮らしたかった世界よ。
あの人の理想を私が受け継ぎ、実現させてみせた。そんな、素晴らしい世界なのよ。何がいけないというのよ。私に逆らうものは、神であろうとも許せなかったわ。私はどこにもいけないところがないのだから、私を嫌う奴は絶対に、妬んでのことに決まっているの。私はそれを知っているわ。
それなのに、何がいけないっていうのよ。そう思った私は、改めて全てを私のものにしようと考えた。全てを私のものにするその計画を、あの人は望んでくれていたわ。それを考えたら、全てが私のものでなければ、むしろおかしいくらいなのよね。
そう。私の力なんだから、私の為に使って何が悪いというのよ。綺麗ごとしか言えない子どもたちの為に、私が変わるその必要なんて、全くない筈だわ。そうよ。何もかも私のものだわ。私のものなんだから、私がどうしようと勝ってじゃない。私の所有物の分際で、私に逆らうなんて。ますます腹立たしかったわ。
私が何を提案しても、羅刹はそれに賛成してくれる。それを上手く梨乃に進言して、それは正式な大神様の命令ということになる。このシステムとしては、あの頃に作られていたものと、そこまで変わらないわね。羅刹を挟むかどうか、差はこれくらいのものだわ。




