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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”十六章” 戻る平和
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今だからこそ

 最近、困った事件が起きた。神の中に、他の種族と仲良くしているような奴が現れたらしい。幼いからそれくらいの経験はしてもいい。それくらいは構わない。私はそう思うのだけれど、あまり親しくしているのを見ると、見逃す訳には行かなくなってくるわ。年長者として、ちゃんと躾はしないといけないものね。

「五月蝿い! おばさんには、この子たちの素晴らしさが分からないんだよ! 神だからって、友達になっちゃいけないなんて、そんなの変じゃん」

 知ったような口をして、何を言っているのかしら。注意をした私に対して、何を言っているのかしら。腹立たしたかった。そして何よりも、おばさんと言われたのに、私は腹が立った。まだまだ若い私に、まだおばさんと呼ばれるほどの年齢ではない私に、何を言っているのよ。許せないわ。

 それに、変なんかじゃないわ。神と他の種族では、異なっていることが沢山ある。それなのに一緒に過ごし、友達になんてなったら、いずれは後悔することになるわ。そうに決まっているのよ、絶対にね。

 お互いに、お互いを裏切ることなくずっと傍にいると、そう誓うのかもしれない。だけど、たとえ誓ったところで、神の隣りにいる人は……。神の隣りにいる存在は、必ず不幸になるの。神は無意識のうちに全てを奪ってしまうのだから、考えてみれば当然のことよね。なんでも思い通りになるように見えて、神なんてそんなものなの。

 夜叉姫も、私や羅刹と一緒にいたせいで、あれだけ不幸な目に遭った。鬼の長である彼女は、本来ならばただ偉そうに踏ん反り返るだけで崇め恐れられる存在。それなのに彼女は運命に翻弄され、あんなに苦しんでしまった。結局、鬼としての彼女は死に、大神様だなんて最も辛い運命を背負った。最後まで、彼女は不幸せに生きてしまっている。

 あれは私の間違いのせいだったわ。この子に私と同じ気持を味わって欲しくないと思うから私は言ったの。それなのに、何がおばさんよ何が。注意してあげた私に対して、そんなことを言うなんて信じられないわ。

「神は特別な存在なの。他の種族と交わることも許されない、特別という名の孤独な存在なの。それを私は分かって欲しくて」

「分かんないよ! そんな理由で親友と離れ離れにされる理由なんて、分かんないよ!」

 どうして分かってくれないのよ。思わず叫びそうになってしまうけれど、さすがに私も大人だからそれくらいは堪える。親友と離れ離れにされる苦しさなら、分かっているわ。でも親友を自分のせいで傷付けてしまうよりは、ずっとましじゃない……。

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