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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”十六章” 戻る平和
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革命者が去って

 人間が魔界へくることが増えたせいかしら。反対に、魔物や妖怪が人間界へ行くことも増えてきた。だけど残念なことに、それらの種族が仲良くなれたのかと言われれば、そうではない。お互いに自分の世界だけでは満足出来なくなって、他の世界へまで渡ってしまっているだけ。

 そもそも、仲良くなんてなれる筈もないわ。魔界に生きる種族とは、魔力を必要をする種族たちよ。それだったら、魔力のなくなった人間界で暮らせはしないでしょう? そして人間界で魔力を手にする為には、人間を食すくらいしか方法がないわ。だから人間界の美の虜になり、人間界で暮らしたいと望む魔界に住むべき者は、人間を食しながら人間界で生きるの。

 そうしたら、人間はそれらの種族を良くは思わないわ。当然よね。だから人間は恐れるとともに、妖怪退治を始めたの。数なら人間の方が遥かに多いし、彼らは団結するということを知っているわ。強く恐ろしい、敵を殺める為だけの物も生まれた。武器が必須とされ、えげつない武器を人間たちは皆手に取った。

 一応言っておくけれど、凛子はただの人間よ。数十年もすれば、死んでしまうわ。当然、魔界と人間界が争いを始めたのは凛子が死んでからのこと。それでも人間は、凛子に救いの手を求め魔界へ通い続けた。魔物たちは、凛子による統率を失って、勝手な行動をしてばかりとなった。

 再び乱れた世界の境界は、誰も引き直すことなど出来ない。そこで、凛子がいかに優秀であったかを知るのでしょう。凛子の真似をして、凛子だったらどうするかと考え、梨乃は梨乃なりに頑張っている。傍で梨乃の様子を見ている私だから、それくらいのことは分かるわ。

 だけど今の世に、梨乃のことを責める人などだれもいない。彼女を責める権利がある人もいなければ、彼女の築く時代よりも良かった、凛子が作っていた時代を知る人もいない。それより良いものを知らなければ、梨乃の作り出すこの時代を最高と思うしかないわ。だから誰も、梨乃のやり方に疑問を抱いてはいない様子だった。

 ええ、分かっている。梨乃が悪い訳じゃないの。彼女はとても頑張っているし、彼女がいなければ、世界がどれだけ乱れていたかと思うわ。しかし凛子が梨乃の裏で治めていた、あのたった数十年のときが、あまりに平和だったと言うだけ。これまでもこれからも、きっとあれほど全てが平和な時代など訪れないのでしょうね。

 女神として、私は様々な人物が作り出す、辛い世を見てきたわ。それでも凛子ほど優しくて、統治する能力に長けた人を見たことがないもの。彼女の生まれ変わりを早く作りたいと思うけれど、それさえも叶わない。元大神様、あの男はどこまで私の邪魔をするのかしら。魔王の名を持つ彼女を、地獄へ連れて行かざるを得ないように……。

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