魔王へ続く闇
「これは何なのです? 怖いなのです」
しかしどうして、こんなところに開いてしまったのかしら。確かにこれを使えば、魔王の元へ行けるかもしれない。でも正しく繋がっていることなんて、二十%程だし…賭けるのは危険ね。
「大丈夫、さあ入るといいわ」
まあいいわ、どうせ私のバリアはこの程度じゃ壊れないし。
「本当なのです? まあ陽香お姉ちゃんが言うなら、まどかは行くなのです」
まどかは震えながらも、右足を穴の上に出した。そして、闇に吸い込まれていく。
「貴方、怖がっているようね。問題ないのでしょう? 一緒に来てくれるかしら」
私が少年を睨み付けると、小さく声を漏らして俯いてしまった。
「はい、問題ありません。その、僕も一緒に行っていいのですか?」
あら? 予想外の返答ね。
「ええ、いいわよ。一緒に行きましょうよ、案内してくれるのでしょう?」
「やったー! 僕、凄い嬉しいです。足手纏いだから、置いてかれると思ってました。わあ、本当に魔王のところに行けるんですね」
何よ、そんな目を輝かせないで。私には眩しいわ、見られないわ。
「じゃ、じゃあ行きますね」
少年も怖がりながら、闇に吸い込まれていった。それに続いて、私も穴に飛び込む。
「ここはどこ、なのです?」
私達が到着したのは、砂漠のど真ん中だった。周りを見渡したって、砂くらいしか見当たらない。
「え? 魔王はどこですか? もしかして僕、また間違えちゃいましたか?」
えっと…、最初の印象とは随分違うわね。もうちょっと賢そうだったんだけど…ね。
「はあ、変な所と繋がったわね。んで貴方達、体は大丈夫? どこも痛くない?」
私優しい! 凄くない? まあそんなことよりも、あの穴を通って大丈夫だったのかしら。
「足が痺れるくらいなのです」
「僕も何だか、足が痺れています」
痺れ? 足に何か、何か着いているのかしら。痺れだったら、多分その程度よね。どこも痛くないって言ったら、一番危ないんだけど。まあ、全然大丈夫そうかしらね。
「これを痺れているところに塗りなさい、そして今日は休むわよ」
私はバックから取り出した小さな缶を、二人に放り投げる。魔界の塗り薬、それも一番効果があるやつを仕入れて来たんだから。
「分かったなのです」
二人は素直に、それを足に塗って行く。全く疑ったりしないのかしら。
「貴方達、名前は何と言うのですか? 僕は川崎悠馬と言います、宜しくお願いします」
悠馬を名乗る少年は、細くて華奢な手を差し出してくる。
「まどかは村上まどかなのです。宜しくなのです」
まどかはぺこりと礼をする。
「私は小鳥遊陽香よ」
差し出された手を払いながらも、私は短く答えた。