怪しげな少年
「あちらの方向へ進むことにするわ、このジジィが正しければ魔王はそこにいる筈だから」
火の村、(何村だっけな)の方向はそれで合っていると思うわ。
でも人間世界には余り来ないから、そんなに自信ないのよね。
「魔王なのです? まあまどかは、陽香お姉ちゃんについてくなのです」
「そう、勝手にしなさい」
私達が歩いていると、建物の陰から少年が出てきた。水色のサラサラな短い髪に、小柄な体。顔を見ても何だか、弱々しそうね。
「あの、すみません。魔王をお探しですか?」
え? 何か知っているのかしら。
「そうよ、それが何だと言うの?」
私が睨み付けると少年は、怖がっているような表情をした。うるうるとした目で、私を見つめてくる。何よ、何だって言うのよぉ。
「宜しければ僕が、魔王のところまで案内しますよ。どうですか?」
魔王のところまで案内? どうゆうことなのかしらね。
「ええいいわ、案内宜しく」
「はい、承りました」
少年は少し先にあった建物に入って行く。
「えっ?」
私は驚き、つい声を漏らしてしまった。その建物の中心にあったのは、直径一メートルくらいの穴。その穴からは、黒い闇が放たれている。
私はこれを知っているわ。私にとっては、見慣れた穴。
「さあ、入って下さい。恐れる必要はありません、どうぞ」
貴方の方がよっぽど恐れてるように見えるわよ?