迷いの先の
「五月蝿いわね。私たちの新しい時代、邪魔をしないで頂戴」
新しい時代に、鬼なんて必要ないわ。悪魔も魔物も、そんな悪い奴らは必要ないのよ。私たち天使と妖精とで、全て纏めて倒してしまうしかないわね。そうして平和を守り、神すら正した素敵なメンバーで新しい道を歩き出すの。
でも、凜子はどこへ行ったのかしら。さっきまでここにいた気がしたんだけど、やっぱまた逃げたのかしらね。まあ、これだけの天使がいる場所ならば、さすがの凜子だって逃げるしかなかったのでしょうね。ただなんでだか分かんないのは、梨乃が残ったってこと。
ちょこちょこ凜子の後を付け回すようなタイプだと思っていたわ。それとも、鬼の長だと聞いたし、魔王の下について回るなんて癪だったのかしら。
そりゃそうよね。悪い奴らは仲間割れをするのが当たり前、だって悪なんだもの。正義は優しさで仲間を大切にし、協力という力で悪を倒すの。以前は協力を嫌っていたけど、まどかを失い悠馬と旅をして私もそれに気が付いたのよ。
「陽香さん、それくらいになさってはいかがです？ 彼女だって、僕らと一緒に新しい世を歩みたいだけかもしれないではありませんか。それに、誰であろうと受け入れてこそ、それこそ新しい世である筈です」
どうやら梨乃の魔力に惑わされてしまったようで、悠馬がそんなことを言って来た。まさか、悠馬に限ってそんなことはありえないと思ったんだけどね。
悠馬は私の仲間よ。それを惑わした梨乃のこと、絶対に許したりする訳にはいかないわね。私もいつ騙されるか分からないから、正気を保っているうちに悠馬のことを説得するしかないわ。
「騙されないで。梨乃は悪い奴、そもそもこの姿だって偽物だったじゃない。嘘ばっかりで、嘘に包まれていて、そんな奴を信じられる訳ないじゃない」
一生懸命私が説得をすると、意外と簡単に悠馬は分かってくれた。やっぱり悠馬は私の仲間だから、私の言葉は信じてくれるのね。これで私ではなく梨乃を選ぶんだったら、もうどうしてやろうかと考えてしまったわ。これが鬼と天使の違いってものよ。
元々は悠馬も悪い存在だったみたいだけど、私に着いてくれた時点でもう悠馬の悪は浄化されたといって大丈夫だわ。梨乃だって、私と一緒に正義の道を進んでくれればいいのに。
天使としての記憶を取り戻し、私はただ一心に正義の心を進めて行こうと決めた。だからその為には、悪を倒すことだって大事なのよ。なんだか冷たいようにも見えて、悠馬も少し甘いのよ。新しい世を作り出すには、甘やかすだけじゃ駄目なんだから。
