表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”十四章” 陽香と言葉 凜子の心
126/150

華は散る

 ここにいるのは、姫神と羅刹と夜叉姫。古くから共に過ごし、遊び回った素晴らしい日々。懐かしい面々なのよ。小鳥遊陽香、川崎悠馬、山瀬梨乃。そんな特に見知らぬ人間三人ではなく、何千年も寄り添った友人なのよ。出会って数週や数か月、その程度の関係じゃないのよ。

 それに、せめて姫神であれば呪いを制限出来るかもしれないわ。呪いの存在を知っているんだから、気を付けることくらいは出来るもの。声を漏らしてしまうことはまだあるけれど、それだっていずれは声を出すこともなくなるでしょう。それなのに、悔しいわ。

 陽香自身が、以前大神様が掛けた私への呪い。呪いと呪いを重ねたから、ここまで大きな呪いへとなってしまった。ここまでの呪いを、本当に最後まで性格の悪いお人だわ。性格の悪い神の中でも選ばれし神なんだから、もう選抜された性格の悪さだものね。

 私を愛してくれていたがゆえ、私を苦しめる。他の生き物は想い人の為に生きるけれど、神は違う。愛するものは苦しめ、苦を与え、そうして守りながらも服従させる。洗脳して相手の力を封じることが、真っ先にやるべきことなのよ。特に強ければ強いほど、言い掛かりに等しいような理由を付けてね。

 私の場合は言い掛かりでも何でもなく、裁かれるべき罪をいくつも免れて来たんだけど。本当に最低だわ。いっそ、正確に罪を裁いて欲しい。それならばきっと、私は死罪となり地獄も地獄、大地獄へと誘われたことでしょう。でも生き地獄よりは、実際の地獄の方がまだまし。

 大神様がいない今、私を殺せる存在こそ少ないんでしょうね。殺して欲しいというのも、生きたくても生きられない皆に失礼よね。それでも私は、呪われたままで生きていくなんて嫌。陽香が皆を傷付ける姿を、何も出来ずに眺めているだけなんて……そんなの絶対に嫌なのよ。

 どうしたらこの呪いから解放されるのかしら。また呪いに掛かったのだから、昔掛けられた呪いは解いてくれたっていいじゃない。それどころか更に重くなるなんて、そんなの可笑しいわ。ああ、声が出ない。ああ、体が動かない。ああ、考えることも出来なくなっていくのね。

 このまま私が全てを失い、陽香が残ったとしたら。姫神と言う存在は完全に消え去り、陽香が人間らしく死んでも、大神様は私に会うことが叶わない。陽香という呪いを強めたのは、それを望んでいると言うことなのかしら。ちょっと、大神様を馬鹿にし過ぎちゃったのかしら。もう限界だわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ