目的を果たす為に
とりあえず一番近くにあった、大きめの家に入ってみた。
「ばぅ、ぐぁう…ぎゃぅ! ヴヴァァ!」
しかしそこに待っていたのは、吠える人間であった。これは…?
「危ないわ、少し下がって頂戴」
私は封印しようと、まどかを家の外に追い出す。でも余り、好きじゃないタイプだわ。
完全に人間の姿、という事はまだ人間は生きているのだから。はぁ、私は立場的に殺す訳にはいかない。
上手く、上手く封印できればいいのだけど。
「ぐぁぁ!!」
私に気が付いたのか、その人間は襲い掛かってくる。姿を見る限り、ただのお爺さんね。ってことは、100%の力でもそんなに無い筈。
そう読んだ私は、右手に悪を浄化する光を集め始めた。しかし私の読みは少し、甘かったようだ。
「ぎゃるっ!」
「ひゃっ!?」
私は少女のような悲鳴を上げて、お爺さんに押し倒される。何よ、これくらい。私は直ぐ上にあるお爺さんの顔に、浄化用の光を纏った右手を当てた。
しかし光に変化はなく、お爺さんに変化もなかった。本当なら、悪を浄化して光は消えて行く筈よ。そしてこうなったという事は、お爺さんは何かに取り付かれた訳じゃない。そうゆうことなのだ。
「ひゃっはっは!」
笑いながらお爺さんは、私の胸もとに片手を乗せる。ふぇっ!?
「ちょっ」
な、何するのよ。お爺さんの手は、遂に私の服の中に…。
「何すんじゃアホ!!」
私の口から私の物とは思えない低レベルな罵声が飛び出し、お爺さんが吹っ飛んだ。いや、蹴り飛ばしただけだから大丈夫よね。
「陽香お姉ちゃん!?」
私の叫び声を聞いて、まどかが飛び込んできた。
「酷いのぅ、老人には優しくするもんじゃぞ」
何このお爺さん、普通に立ち上がりやがった。
「ねえ爺さん、ここに魔王は来なかったかしら?」
頼りにならなそうな爺さんだったけど、私は一応訊いてみた。
「魔王? 魔王かどうかは分からんが、少女が村人を攫って行ったぞ。んー、魔王って感じではなかったのだが…やっていることは魔王ってレベルじゃなかったと思う」
少女が村人を? いい情報かも知れないわね、もっと詳しく聞いてみましょう。
「どんな少女? 名前は分かる?」
「えっと、そうじゃのう。とても綺麗な人じゃった、特に黒髪なんて凄く綺麗で。儂も危うく、殺されに行くところじゃった。名前は、凜子様とか言ってたかのう。それと、凄く笑顔だったのを覚えておる」
へえ、このエロジジィ結構な情報持ってるじゃないの。
「どこに行ったか分かる?」
「そこまでは、分からんな。でも、legend stoneを狙っておるのは確かじゃな。だから今度は、”fire stone”なんじゃないかと儂は思う」
ふ~ん、このエロジジィを信じてみましょう。
「お礼にってことで、…」
エロジジィはニヤリとする。
「何もしないわよ。さあまどか、早く行きましょう」
「もう行くなのです? 分かったなのです」
それにさっさと、医者を見つけないと。それこそこのジジィに聞くべき? でもジジィ、もう目が逝っちゃってるのよね。
「仕方がないわね、少し目を瞑って」
私は仕方がないので、自分の力でまどかを回復させた。
「これで大丈夫でしょう、さあ急いで」
「はいなのです!」
まどかは元気に答える、五月蝿いわねえ。