大神、君臨
「次は、先程のように上手くは行かないのではないでしょうか」
羅刹のその言葉と共に、神の襲撃が再び始まった。バリアの中にいたら、一日程も安全でいられる。しかしそんなことで、ストーンを散らしてしまう訳にはいかなかった。今の私たちはまだ戦うに十分な力を持っているのだから、ストーンの魔力を無駄に削る必要などないわ。
私は立ち上がり、女神の姿となった。陽香と言う少女を完全に消し去って、姫神を蘇らせた。人間の気持ちをやっと理解することが出来て、正義を知ることが出来た。姫神はそんな優しさも全てなくしてしまうと思って、私は陽香がなくなりはしないよう気を付けていた。
それでも今の私は覚悟が出来てる。だから自らの手で陽香を殺し、姫神としてバリアの外へと出たんだ。神の襲撃になんて、絶対に負けはしないわ。女神を、姫神様を舐められては困るわね。
不思議と、今回も神たちを楽に撃退することが出来た。と言うよりも、さっきと同じ顔だったと思う。普通に攻撃しても、神は死んだりしない。だから私は神としての力を奪い、不死の能力を失ったところを凜子が止めを刺した。
つまり、ちゃんと死んだ筈なのである。そんな奴がなぜ再びここにいるのか。似ているだけ? そんなことはないと思うのだけれど。私は不思議で仕方がなかった。戦闘中に考えごとをし、油断してしまうなんて論外だというのに。
「ちゃんと集中しようぜ? 姫神ちゃん」
後ろから抱き締められた。声がした瞬間は殺されると思ったのだけれど、すぐに相手にはその気がないのだと分かる。だって私は、その声に聞き覚えがあったから。
「大神様? どうしてこのようなところに貴方が」
問い掛けるけれど、答えは帰って来なかった。でも本当にどうしてなの? 雑魚の寄せ集めみたいな感じだったのに、その中に大神様が現れるなんて。彼を相手にしては、女神として戦っても勝てるものではない。少なくとも、今のこの状況ではね。
それでも倒す術は持っている。それは人間が人間に使うような、愚かで簡単な方法。それでも愚かな大神様は、簡単な罠に引っ掛かり死んでくれることを知っている。私が死んでと願えば、彼が死んでくれることを知っている。
私が手段を持っていることを知らないので、誰かが助けに来るかもしれないと思った。それが不安だったのだが、誰も助けには来ずに私はそのまま攫われる。それで良かったのだけれど、それはそれで不快である。一人でもいいから、助けに来て欲しかったわ。




