重ね合って
そう微笑み合っていると、突然大きな魔力を感じた。恐らく、神々が怒って襲来したのでしょう。まるで、私と凜子が戻って来るのを待っていたと言わんばかりのタイミングだったわ。
「ストーンの解放、お願い。天使は人間を避難させて! 悪いけど、悪魔と魔物は戦って頂戴。間違えないで欲しいのは、貴方達の命を下に見ている訳ではないわ! 貴方達の力を信じているのよ」
羅刹は素早く時間稼ぎに向かう。彼がそうしている間に、私はそれぞれに指示を出した。小さく頷いてくれたから、私の指令は間違っていなかった様子。羅刹に認めて貰えたようで嬉しかったけれど、今はそんなことを考えている場合では無い。
皆は私の指示に従って動いてくれる。悪と呼ばれる存在だけれど、強さは確かだわ。それに悪ではないから、私は女神として守らなければいけない。こうすることにより、人間に悪ではないと思い直して貰えるかもしれないし。
「この程度の人数なら勝てる。大勢来なくて良かった。こちらは一斉に行こう」
凜子の声を合図に、一気に襲い掛かった。戦神がいたので少し私は恐れたけれど、魔物にはそんなこと関係なかった様子。全く怯む様子も見せず、戦の神と呼ばれる存在を食い尽くしてしまった。
意外と罠などもなく、普通に私達は勝利を収めることが出来た。訓練もせずに酒や女や、神界は毎日酒宴。それは本当だったらしく、強い筈の神々は簡単に倒すことが出来た。果たしてこれが本当に神なのか、演技ではなく本当にこれが実力なのか。疑ってしまうほどの軟弱さだった。
「神など信用なりません。殺めてしまわれて下さい」
誰と戦うときにも、羅刹は殺すことを避けようとしていた。乱し殺してしまうことはあったが、意図的に弱った命を消すことなどしない。
鬼神として生まれたからこそ、壊すことを殺すことを奪うことを。そのような非行を何より嫌い何より憎む、そんな羅刹が口にした殺めろと言う言葉。
それほどまでに神は醜い存在になっていたかと、私は少しだけ残念に感じた。
「神は私欲が為多くの儚き命を犠牲にしてきた! そんな奴をいつまで崇めている! 今こそ古い縛りを解き放ち、新しき神と新しい世界を作ろうではないか! もっと、誰もが幸せになれる世界をッ!!」
私も神と言う名を持つ以上、凜子の叫びにも少し胸を痛めた。もう神の世はとっくに追放されているけれど、私だって神には違いないわ。神にも見捨てられた、全てに恨まれるべき神。
羅刹に救って貰えなければ……。いいや、今はこんなことを考えるべきではないわね。それよりも、腐り果てた醜い神を殺す為に戦いましょう。同じ神として、その悪行を裁かなければいけないわ。




