力を重ねて
凜子による説得後、私も説得をしようとする。やっと私が女神であることに気付いたらしく、悪魔たちは更なる戸惑いの表情を見せる。そして私たちの顔を順にみると、皆が一斉に頷いてくれた。
「協力感謝する。急がないと、仲間が危ない」
優しい凜子は、ためらうことなく仲間と言ってくれた。この場合それが指しているのは、きっと羅刹のことである。彼女なら散々酷い目に遭わせて来た人間たちのことも、仲間と言い守ろうとするでしょうけどね。それほどまでに、優しさに満ち溢れた少女だから。
あまりにも優しい魔王の言葉。天使も悪魔も頷き合い、一気に人間界へと降り立った。どうやら妖精たちも集合していたらしい。天使も悪魔も、全軍でこちらへ訪れてくれているみたい。本当に、警戒心のない種族たちだと思うわ。
つまりここには、全妖精と全悪魔、全天使に多くの魔物と多くの人間。そして女神と鬼神が会していると言う訳ね。ああ恐ろしい、普通に考えたら有り得る筈のない面会よ。貴重だとは思うけれど、誰であっても良いこととは思い難いでしょう。
仲直りの会議、これで平和! なんて考える人がいれば、それはそれで羨ましいくらいだわ。能天気通り越してお花畑、むしろそれすら通り越しているんじゃないかしらね。
「上手く行ったようですね。幸いと言っていいものか分かりませんが、お二人がいない間に神の襲撃はありませんでした。なんの情報も得られませんでしたが、留守を守れたという点では完璧でしょう? ふふっ」
いつものように、羅刹は微笑んでいる。それでもその微笑みに、多少の焦りが浮かべられていることに私は気付いてしまった。顔に現れてしまうほどに、今の羅刹は戸惑いや焦りを感じている。
大逆転の策略がないってこと? この状況を引っ繰り返せるようなとびっきりの策略を、いつだって羅刹は用意しておいてくれたの。だから私が慌てていても、羅刹は冷静に微笑んでいた。それを信用していたから、私は慌て迷いながらも取り乱すことはなかったのよ。
悔しいところはあるけれど、羅刹は私よりも強くて賢くて。そんな彼に頼らなければ、私は何も出来ない。強がりながらも、彼を信じていて頼っていて、誰よりもずっとずっと信頼していたの。羅刹と一緒なら、私は負けないって。そう思っていた。
「ええ、よくやってくれたわ。私や凛子がいないと言うことがばれてしまえば、きっとチャンスとばかりに襲って来たでしょう。それを隠したことも、貴方の立派な手柄だと思うわ」




