stone 空の彼方へ
そりゃそうよね。今は、二人にとって共通の敵がいる。同じ敵に立ち向かうならば、二人が争う必要はなくなる。ある意味、平和にしてくれているのかもね。あいつらがいなかったら、二人はそもそも敵対することもなかった。そこを考えると、やっぱり平和になんてしていない。
今は、神を庇うようなことを考えないことね。士気を下げるような真似、くれぐれもしてはいけないわ。スターちゃんだって、ここで私が神を庇えばよく思わない。何せ、私は元神なのだから。
「stoneが次々に反応しています。僕の言葉は無事に届いたようですね」
羅刹が微笑み、そう呟いた。それから間を開けず、人々を引き連れた妖精が訪れる。そしていつの間にか、全ての妖精がここに集合していた。人間は全てか分からないけれど、かなり大勢いると思う。
「これだけの人が力を合わせれば、きっと悪にも立ち向かえる。この腐った世界を変えよう」
力強く、憎しみと慈愛に溢れた声で、凜子は呼び掛けた。そしてそれに、人間たちや妖精は応えてくれた。今まで悪と勘違いしていた、魔王の言葉に。これは、魔王凜子の正義を認めた証。クズな魔王を、やっと倒した証拠なのだと思う。
本当に強い少女よね。魔物が悪と言うイメージを消す為、魔王となり正義を貫こうとする。それにより嫌われることが分かっていても、魔王を名乗った。
「この行動に対し、神の連中はどう思いますかね? ここまで様々な種族のものに嫌われてしまえば、もう何も気にしないかもしれません。全力で来られるとかなり危険ですし、天使や悪魔の下へも向かいましょうか」
人間、魔物、妖精、この三つはもう仲間にした。残るは天使と魔王、そしてその二つが敵ならば勝率は格段に下がる。だからそれをこちらに付けようと、交渉しに行くと言うのね。
「羅刹はここを見ていて貰える? 私と凜子で行こうと思うの」
まず凜子が着いて来ることは確実。魔王の噂はもう広まっている筈だし、魔王が悪と言う間違ったイメージはあそこでも共通だわ。そして私は女神、女神が正義と言う間違ったイメージも共通。
その二人の協力と言う時点で、異常事態なのは悟ってくれるでしょう。そして女神の訴えは、正義と勘違いしているから聞いてくれる。鬼神の言葉よりも魔王の言葉よりも、これは確かなことだわ。
「どんな目に遭うか分かりません。一応、数個のstoneと妖精をお持ち下さい」
少し心配し過ぎではないかしら。凜子だって弱くないのよ? 彼女が時間稼ぎをしている間に、私は羅刹に救助要請。それくらいは出来るわ。そこまで強い敵と戦う訳でもあるまい。




