stone 妖精たちを
「物凄い魔力だね。天才スターちゃんを合わせたら、もっと強くなれるんじゃない? それに、今の世界がどれだけ汚れているか思い知ったわ」
多くの人間がやってきた。そしてそれを率いているのはスターちゃんであった。笑顔の彼女だから、憎そうに不機嫌な表情を浮かべているのは斬新。驚いてしまった。
「さすがはスターちゃんですね。貴方が一番最初にここへやってきました。妖精のトップと言う訳ですね」
羅刹がそんな褒め言葉を並べると、スターちゃんは気分が良さそうに笑った。さっき浮かべていた恨めしそうな顔は、もう面影もなくなっている。
「世界の汚れ? どういう意味」
疲れている様子の人間たちに座って休むよう促すと、凜子は疑問をスターちゃんに問い掛けた。どうやら誰も、彼女があれだけ恐れていた魔王だと言うことに気付いていないよう。
「悪者があんたじゃないって気付いたの。確かに鳥籠に閉じ込められて、この野郎って思った。でも……、大神様なんて大っ嫌い」
大神様は妖精を大切にし、守っていた筈。それなのに、どうしてスターちゃんが大嫌いになってしまうのであろう。
「しゃーないから、お偉いさんだしずっと媚び売ってたの。そしたら調子乗り出してさ。ほら、あんたらが話してるときに妖精消えたっしょ? まさかの誘拐だよ、信じられないよね。そんでよく魔王の否定を出来たもんだわ。したらあんたの声が聞こえて来て、そんならって信じてみたのよ。あたしの村の生き残りも連れてね」
逃げ出したのではなく、狼様の下へ攫われたと言うのかしら。まさか、妖精好きとは言えそんなことをするとは。大切にしていたのに、遂には相手を思いやる気持ちも忘れてしまったのね。憐れな大神様。
「一緒に皆も逃がしたし、来るかもしんないし来ないかもしんない。来れないってのもあるかな」
私も不安だし羅刹も凜子も不安気な表情、それでもスターちゃんは笑っていた。悲しい表情など一切残さず、まるで本当に何かが楽しいかのような笑顔を浮かべていた。そこまでの強さが私にあれば。
「鳥籠は悪いと思っている。見せしめにしろと言われ、そうするしかなかった。従うしか出来なかった、弱い私を許して欲しい」
凜子が弱いなんて言ったら、他の皆が最弱者になってしまうじゃない。彼女の申し訳なさそうな表情を見て、スターちゃんは怒ってもいない様子。二人とも本当に強い心の持ち主よね。
「いいよ。スターちゃん別に気にしてないし? 今は神共の方が気に入らない」




