神を相手にし
「これがあれば、恐らく妖精はここに現れざるを得なくなります。stoneがないと、満足に力が使えませんからね」
羅刹は何を企んでいるのか、楽しそうに微笑んでいた。何か分からないけれど、きっと彼が考えると言うことは素晴らしいもの。心配は必要なさそうね。
「封印せずにstoneの力を存分に使おう。そして、この世界を私たちの手で変えよう」
微笑みは絶やさずに、キリッと凜子は宣言。頷き合い、私たちは地獄を抜け出し地上へと上がった。
「魔力をあえてアピールしましょう。神はそこまで馬鹿ではないので、少しは警戒する筈です。神とは言え無敵ではない、何もかもが分かる訳ではない。だから、隠すよりは見せた方がいいと思います」
どうせ隠そうとしても、私たち本人の魔力ですら人間の世界では目立ってしまう。だから隠すくらいなら、いっそ見せろってのが羅刹の意見なのね。何かの罠ではないかと疑うものね、当然。
「了解。それじゃそうする」
素直な凜子がそう言うと、異様なまでの魔力が放たれた。驚くほどの魔力が。隣にいると、敵意がない筈なのに消されてしまいそうなほどの魔力。しかし私たちも神なのよ? よく信用してこんなにも分かり易く。
本当に素直過ぎる子だわ。こんな優しい子、信じられないわよ。こんな優しい子、こんな優しい子をよくも。やっぱり、今の神界をなんとかしないとって思うわ。
「っと、危ないわね」
これだけの魔力、気付かない筈がない。警戒する様子もなく、目の前に現れた馬鹿な神がいた。しかし不意打ちだからと言って、私が攻撃を喰らうとでも? 無警戒なカスじゃないわ。
「驚いた。神って危ないんだなぁ」
嫌味臭くそう言った凜子は、少し前に言っていた言葉通りstoneの力を存分に使っているよう。悍ましいほどの魔力を、フルで使っているよう。いくら神とは言えただじゃ済まないでしょう。
「凜子さん、止めて下さい。もう攻撃を抑えて下さい」
私は普通に「もっとやれー!」とか思っていたんだけど、羅刹はそれを止めた。stoneの力に殆んど限りはないし、別にケチる必要ないじゃない。
「逃げたのか? ふん」
凜子が言うように、そこには誰もいなくなっていた。もういないからいい、ってことなのかしら。気付けたのは羅刹だからなのかしら。分かんないけど。
「いいえ。僕たちの力を測りに来た、それだけです。だからこの場合、余裕でまだまだ行けるぜアピールが本当は必要だったのです」
あ、羅刹にそう言われてやっと気付いた。やはり馬鹿な神などいない、今更気付いたわ。凜子も申し訳なさそうに項垂れてしまう。




