揃うストーン
「お前、正気かよ。神を落とされたからって、これはさすがにヤバいだろ」
五月蝿いわね。全世界を敵に回したクズに、そんなことを言われたくはないわ。コイツのおかげで吹っ切れたから、そこは感謝するけどね。
「構わないわ。差別について改めて考えられた、ありがとね」
二人の魔王に感謝の言葉を述べ、私は地獄にいる全ての生き物を地上へと送り出した。誰も、好き好んで地獄に入る奴なんていないわ。だから解放してあげれば、気付いた者は皆逃げ出してくれた。
「姫神様、こうなってしまえば引き返すことは出来ませんよ? 古い神を消し去りましょう」
引き返す? そんなこと、絶対にする筈がないわ。私は革命者となるの。この腐った世界を変える存在となってみせるの。
「逃げていいのよ? さあ、地上へ上がりなさい」
女神として本来の力を使う。かつて魔王と恐れられた、殺すことを愛する男。私は彼にばれないよう浄化し、地上に放った。突然優しさを見せれば、好意的な印象が必ず生まれる為浄化がし易くなるの。
「多分、これで魔王については大丈夫。魔王は恐ろしい、その言い伝えや記憶を消して頂戴。それが魔物を救う第一歩になると思うわ」
私の言葉に頷いて、羅刹は何かの力を使ってくれた。これでいいのかしら。魔王を倒すことが出来た、そう考えてもいいのかしら。
「人間は問題ありません。しかしもう一度その考えを広まらせない為、妖精と人間を近付けない必要があります」
そこまで強力なものではない、ということね。弱い人間には効いたけれど、魔力を持つ妖精にまでは渡らなかった。それならば、本当に急がないといけないわ。人間は妖精を信仰しているようなものだもの。しかし妖精たちがどこに行ったかなんて、分かりやしないわ。
「手にしたストーンはどこにありますか? あの力を使えば、どんな作業も楽になる筈です」
そうね。陽香は凜子の手からストーンを守っていた。でも今は、凜子と力を合わせるべき時。凜子が奪ったストーンと羅刹が奪ったストーン、それを合わせれば結構な数になるんじゃないかしら。
「盗まれないよう持ち歩いている。あと一つ、足りないの」
そう言って凜子はブレスレットを見せる。そしてそれに何かの魔法を掛けると、いくつもの石が出て来た。これが全てstoneだと言うのかしら。それならば、あと一つと言うのも本当なようね。
「そうでしょうね。あと一つ、それは僕が持っていますから」
微笑んだ羅刹はstoneを一つ取り出した。つまり、ここに全てが集まっていると言うことである。どれだけの力を発揮してくれるのかしら、楽しみね。




