表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”十二章”  遂に揃うレジェンドストーン 光と闇の戦い(下)
104/150

私と私

 二人の魔王に、私はそう言われた。悪の女神、美しい女神。私としては、勿論美しい女神と言って貰った方が嬉しいわ。それでも実際の私は、悪の女神の方が近いんじゃないかと思ってしまうの。そちらの方が正しいと思ってしまうの。

 その後の言葉も、凜子は間違っていると思うわ。同じ志を持つ筈なのに、彼女はそう言った。それでも同じ志なんて持っていないんだから、理解出来ないのは当然だわ。

 それに比べれば、まだ正しいことを言っている。だって言葉の意味はともかく、凜子も魔王には違いないのだから。ただ魔王ではあるけれど、同じ魔王ではない。だからこちらも、理解出来ないのは当然と言えるわね。

「私は、小鳥遊陽香よ。魔王なんかに、まどかは渡さないの。まどかのことは、私が守るの」

 そんなこと言っていない。私はそんなこと言っていない。陽香が私に宿ろうとしている、というのはこういうことだったのね。それでも今、私は陽香に体を渡す訳にはいかない。私が陽香に負けてしまう訳にはいかない。

 彼女が守ろうとしている、まどかの為にも。私が守りたいと願う、羅刹の為にも。私の為にも、陽香の為にも。そうしてこの場合、何よりも凜子の為に。ここで陽香に体を渡してしまう訳にはいかないのよ。

 そんな思いとは裏腹に、私は自由を奪われて行く。体を動かすことは愚か、考えることすらままならなくなってしまう。それだけは、意識だけは保たなければいけない。陽香に乗っ取られたとしても、大人しく眠っている訳にはいかないわ。

 確かに陽香が現れてしまえば、私の体は私が動かすことなど出来ない。私の想いは言葉になんてならない。それでも陽香が去ったときの為、情景を見ていないといけない。状況の把握をし易くする為、見ることだけでもしないといけない。

 どうすればいいのよ。意識を失おうとしている、視界が奪われて行く。どうすればいいの? 私はどうすればいいのよ。負けてはいけない、戦わなければいけない。凜子がそうしているように、私も戦わなければいけない。だって、敵は他でもない私自身なのだから。

「負ける訳にはいかないのよっ!」

 驚いた。心の中で叫びたい、私を失わないよう叫びたい。その程度の願いしかなかった、その程度の言葉だと思っていた。それなのに、陽香に勝利して声になり口から出て来た。それでもまどかがいる以上、いつまた陽香が出てくるか分からないわ。なんとかしないと。

 それでもさっき陽香が出て来てしまった。私を失ってしまった。そのせいで、まどかの影響の大きさを奴は改めて感じた筈。重要性を更に感じ、警戒心を上げるでしょう。絶対に離さないつもりでしょう。だって奴はバカなんかじゃないから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ