歌はストレス解消法。
フランは、執務室から無事脱出すると、街へ向かった。
いつもどおり活気のある街を、フランは何気ない足取りで歩く。
途中、装飾品屋の店員に呼び止められたり、知り合いに食事に誘われたりしたが、丁重に断って、目的地まで黙々と歩いた。
着いた場所は、この街の象徴であるユグドラシル、通称・世界樹がある中央広場だ。
中央広場といっても、あるのは世界樹だけで、他には何もない。
ついでに言えば、この木は、北欧神話にある世界樹というわけではなく、この街ができる前からあった為、これからの繁栄を願い、世界樹の意味を持つユグドラシルと名付けられたとか。
フランにとって、そんな事はどうでもいいのだが、この木は、自分に力を与えてくれるようで、暇なときはよく訪れていた。
「はあ・・・。」
今日何度目かの溜息をつくと、それに反応したように世界樹が風に揺れた。
少し落ち着いたフランは、小さい頃に旅人に教えてもらった歌を口ずさんだ。
鳥は歌い 踊る旋律
波長は 変容の祝福
はるかなる記憶 抱いて
巡る螺旋 意味をゆだね
容を変えて 波動を伝える
永遠の喜びは いま
※FF5ディアフレンズ 『はるかなる故郷』
フランの優しい歌声が、広場中に響いた。
静かに歌うその声は、悲しみの中に光を感じるようなもので、広場にいた人が耳を傾けていた。
フランは歌い終わると、周りを気にせずに目を閉じた。
***
フランが目を覚ますと、辺は茜色に染まっていた。
そのことから、数時間爆睡していたことが分かる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そろそろ帰ろうかとベンチから立ち上がると、どこかから悲鳴が聞こえてきた。
(これは絶対フラグだ!!
・・・・・どうしようか
フラグは避けたいんだが・・・・・・
俺の家が治める街で事件が起きるのは嫌だなぁ~
事故処理絶対俺に回ってくるし・・・
よし、行くか!
事故処理の方が面倒だと思うし・・・・・)
と考え終わると、フランは悲鳴の聞こえてきた方へ急いだ。