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プロローグ 〜求ム。授業中に急に来る腹痛の対処法について〜

初めまして、けん玉です。


だいぶ前にノベルバと言うサイトに掲載していた作品のリメイクです。

サ終すると聞いて残しておきたいと思い、リメイクをすることにしました。


知っている方がいるかは分かりませんが、内容だいぶ変わります。

急な腹痛 対処法


検索。


対処法1 横になって休む。


…論外。授業中です。


対処法2 水を飲む。


これはありだ。


そう思ってペットボトルの水をガブ飲みする。




…白湯などがいいでしょう。冷たい水を一気に飲むのは逆効果です。




…ギュルルルル…



「ふっ…おぉ…」


そういう事は先に言いなさい…!!



「…くん、優くん。」


「…え?あ、はい?」


隣からの声にそう尋ねる。


「…大丈夫?顔真っ白だけど。」


そう尋ねるのは江ノ島(えのしま) 那奈(なな)。

クラスメイトだ。


「…大丈夫。ちょっと腹痛で…。」


「保健室行けば…?」


「いや、それは…。」


授業中。

手を挙げて目立つのだけは避けたい。


「ちょっとまっててね…先生!」


そう言って江ノ島は手を挙げた。


「ちょ…」



「江ノ島さん?どうかしましたか?」


初老の女教師の堀江がチョークを止めて尋ねた。


「優く…藤山くん…体調悪いみたいで…。」


江ノ島のその言葉にクラス中の視線は、こちらを向く。


ちなみにクラス替え一発目の授業だ。

それに堀江先生はこの学校に着任したばかり。


「すみません、あなたが藤山くんですか?」


丁寧な口調で堀江は尋ねる。


「アッハイ。」


忘れてんのかよ。

…違うわ。最初の自己紹介の時オレ、トイレ籠ってたわ。

これで行ったらこの授業で2回目だわ。


「と、藤山(とうやま) 優(ゆう)です。」


テンパって何故か自己紹介をする優。


「顔が真っ青ですね。体調不良ですか?」


「すみません…ちょっとトイレに…。」


その質問に、そそくさと教室を後にする。



…目立ちポイント7ってとこかな。

10が最高。


注目とはいい言葉に聞こえるだろう。


…だがそれはいい意味で注目された時だ。


オレも昔は目立ちたかった側の人間だ。

みんなから注目されるクラスのムードメーカー。

友達もたくさんいてクラスの人気ものになる。


…そうすれば父さんは…



考えかけて首を横に振ると、優はトイレに急いだ。



チャイムが鳴った。

授業の終了を告げる鐘。


しめた。


優は休み時間のうちに教室に戻った。


「ふぅ…。」


お腹をさすりながら席に着く。


数学の授業、途中から出席。

目立ちポイント6


途中離席&謎の自己紹介。

目立ちポイント 7…いや、江ノ島さんに目を掛けられたとすれば8はいったか…。

今日だけで既に15も稼いでいる。

1時間目だぞまだ…。

1日20が限界だ。


「あ、優くん。体調は治った?」


長い黒髪の美少女が優の視線に映る。


「!」


まずい。


江ノ島那奈。


彼女は危険人物だ。


容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。

それでいて誰とでも話せる、コミュ力を持った少女。

クラスの…いや、学校のアイドルと言っても差し支えないのが彼女、江ノ島那奈だ。


彼女が話しかける=話しかけられた相手は目立つ。

しかも陰キャに話しかけたとなれば悪い意味で目立つ。


目立ちポイントは高ポイントになるだろう。



「ちょっとまだ悪くて。少し休むね。」


早口でそう言うと、優は机に突っ伏した。


「ちょ、本当に大丈夫?保健室で寝てた方がいいんじゃない?由紀ちゃーん!うちの保健委員って誰だっけ?!」


江ノ島は大声で誰かを呼ぶ。


「…保健委員?確か中町くんと三杉だったと思うけど。」


一拍置いてそう返したのは茶髪、ショートボブの女子生徒、松山(まつやま) 由紀(ゆき)。



非常にまずい。

松山さんも美少女で有名な女子だ。


そんな2人がオレの机に集まってくる…。



「ほ、本当に大丈夫だから…トイレ行きたかっただけで…!」


「ほんとにぃ?」


優のその言葉に、江ノ島は怪訝な顔で覗き込んでくる。


「なら良かった!」


江ノ島はそう言って笑みを見せる。


「…あんまり無理しちゃダメよ。」


そう言うのは松山さんだ。


「そうするよ…。」


そう言って優はイヤホンをしてスマホに目を向けた。


「由紀ちゃん、次の授業なんだっけ?」


「…古文。」


しかし、何故か優の席を囲んで会話を続ける美少女2人。


勘弁してくれ…。


―都内、23区外。


少子化の影響を受けてか各学年3クラスまで減ってしまった市立第1高校。

そこの2年A組が、優の所属するクラスだった。

男子15人、女子13人。

合計28人のイジメなど無い平和なクラスだが、クラス替えをして間もないというのにクラス内には既にグループが出来上がっている。


優は目の前で談笑する2人を尻目に、クラス内に視線を向ける。


4人組になり、スマホゲームに勤しむ男子4人組。


一応進学校の為、3人で授業の予習をしている男2人、女子1人のグループ。


クラスの1番後ろのロッカー。

その上に座り談笑する制服を着崩した男子3人組。


窓際の1番後ろ。

2人で駄べりながら、鏡で化粧をしている金髪の女子2人組。


教卓の横。

わざわざ三脚を持ち込みスマホを立て、何やらダンスの動画を撮っている女子3人組。


その他にもグループとまでは行かないが、クラス替え後に仲良くなったと思われる団体がちらほらいる。


1人なのはイヤホンを付け、黙々と勉強をするメガネの男子。ボーッと窓の外を見ている女子生徒。



…そしてオレ!!


…悲しくなってきた。




大小あれどグループは存在する。

そのグループの中でも一際目立つのが…


「江ノ島さん、松山さん。何の話をしてるんだ?」


そう話しかけるは、右目の下の泣きぼくろが特徴の金髪の美男子。


「あ、天城くん。」


天城(あまぎ) 光佑(こうすけ)。


2年Aクラスはどんなクラス?

と聞かれた時。

天城光佑がいるクラス。

と答えるものが多い。


「…次の授業の話をしてたのよ。」


「江ノ島さん、次は古文だよ。」


「あはは、さっき由紀ちゃんにきーた。」


そう言って談笑を始める3人。


「ところで…なぜ藤山の席に集まってるんだ?」


「え?一緒にお喋りしてたから。」


そうなの?

イヤホンしてんだけどオレ。


「…オレは別に…こ、古文の先生誰だっけ?」


その言葉に江ノ島と話していた天城の視線が、優に向く。

江ノ島と話していた時とは一転。

酷く侮蔑したような視線で、座っている優を見下ろす。


「…江ノ島さんは優しいな。」


「?、何が?」


江ノ島が可愛らしく首を傾げる。


「知らないのか?藤山の噂。」


「噂って…「天城くん。」」


江ノ島の疑問符に被せるように松山が話す。


「…今その話は関係ないでしょ?」


「…フッ、松山さんも優しいね。藤山、お前は次の授業の準備をしたらどうだ。」


「…へいへい、そーするよ。」


そう言って優は立ち上がる。


「ゆ、優くん…?噂って「名前。」…え?」


「前に名前じゃなくて苗字で呼ぶように言ったよな?江ノ島さん。」


「ごめん…。」


その言葉を背に優は後ろのロッカーに歩き出した。



「おーい、天城。古文の教科書忘れちまってよ。B組一緒に行こーぜ。」


優が動いたあと、そこにやってきたのは茶髪のパーマヘアが特徴の男子、桝谷(ますたに) 康太(こうた)。


天城、桝谷、江ノ島、松山。

クラス替え後すぐに頭角を表した、通称「天城グループ」。

人気者4人で構成されたグループはすぐにクラスの中心となった。



…トイレ行っとくか。


──


「ふぅ。」


トイレで手を洗う優。

ちなみに今回は小さい方だ。


「…藤山。」


手を洗っていると、鏡に特徴的な金髪が写る。


「天城…?どうし…」


言い切る前に胸ぐらを掴まれる。


「…なぜ江ノ島さんはお前を名前呼びなんだ?」


視線を後ろに向けると桝谷も一緒だった。


「…1年の頃同じクラスだったからかな。」


「1年の頃…ね。…諦めろ藤山。お前じゃ釣り合ってないよ。」


酷く乾いた笑みで天城はそう言った。


「…」


その言葉に優は目を細める。


「…え?釣り合うって何が?江ノ島さん優しいよな…。一人ぼっちなのを見かねて仕方なく話しかけてくれたんだもんな。」


優も同じ笑みでそう返した。


「…ブハッ、分かってんじゃん。フジヤマくん。」


桝谷が吹き出しながらそう言った。


「トウヤマな。百も承知だよ。オレと江ノ島さんが釣り合う訳ない。」


「…フッ、連絡先を教えろ藤山。」


「え?なんで?」


「江ノ島さんと仲が良いんだろう?特別にお前を俺のグループに入れてやる。」


…は?

こいつ今なんて?


「江ノ島さんについて教えろ。」


「おい、天城。本当にこんなやつグループに入れんのかよ?」


桝谷が呆れながら尋ねた。


「いいじゃないか。こいつは使えそうだ。」


「いやいや、なんでオレが…「まあ天城がいいなら良いけどよ。…たしかにパシリとして使えそーだな。」」


非常にまずい。

このまま人気者グループに入れば目立ってしまう。


「ちょ、オレはお前らのグループには入らないぞ?」


「ああ?」


桝谷は胸ぐらを掴む。


「お前如きを天城が仲良くしてやろーって言ってんだ。…断ってんじゃねーよ。」


詰んだ。

承諾すれば天城グループとして、天城への情報提供者に…。

断れば2人に目をつけられる…。


…ならばより目立たない方を。


「…分かったよ。」


そう言って優は天城に携帯を差し出した。


「フッ、これからよろしくな。藤山。」


「あ、ああ…。」


明らかな作り笑いの天城に、優もどうにか作り笑いを見せる。


「これから色々頼むぜ。フジヤマくん?」


天城、桝谷はそう言って優の肩に腕を回すと、教室に歩き出す。



め、めんどくせぇ…!

…てか、フジヤマって誰だよ。


──


「あ、おかえり天城く…あれ?ゆ…藤山くんも一緒なんだ!」


天城と一緒にいる優を見て、江ノ島は笑顔を見せる。


「さっきトイレで会って話したんだ。結構気が合うんだよ。俺たち。な?」


天城は笑顔で尋ねた。


「は、はは。そうそう。」


「へー!じゃあ藤山くん。連絡先交換してよ!前に作ったグループチャット、藤山くんも招待して…「江ノ島さん。それは俺がやっておくよ。」」


江ノ島が言い切る前に天城に阻まれる。


ちょうど、そのタイミングでチャイムがなる。


「みんな座れー。授業だぞ。」


古文教室、藤崎の声が響いた。


「じゃあ、後で。」


そう言って天城、桝谷は席に戻って行った。


…はぁ…どうしてこんな事に…。



──


そこからは厄介事の毎日だった。

特に桝谷が厄介で、ことある事にオレをパシってくる。

日直を押し付けられたり、課題を代わりにやる事も多かった。


「フジヤマ、これで俺のパン買ってきてくれよ。釣りはやるからよ。…お前、両親いなくて金無いんだろ?」


「ッ…」


天城グループに所属した…と言っても1週間経っても一緒に遊びに行ったりすることは無かった。

体良く天城、桝谷の小間使いになっただけだ。

まぁ目立たないからそっちの方が楽だったりはするが…。


今日も桝谷の課題を代わりにやり終えた優は、ようやくの帰路に着く。


「藤山くん。」


そんな時後ろから話しかけられる。

江ノ島だった。


「…江ノ島さん?天城たちと遊びに行ったんじゃ?」


「今日は断っちゃった。由紀ちゃんの家で課題やってて…。その帰り。」


「…そ。じゃあこれで。」


そう言って優は歩き出す。


「待ってよ!…優くん。」


江ノ島は呼び止めると、そう言って俯く。


「い…一緒に帰らない…?ほ、ほら!せっかく最近仲良くなったんだから…」


江ノ島はぎこちなく笑う。

その様子に優は目を細めた。


「…天城。」


「え?」


優のその言葉に、江ノ島はキョトンとした顔で尋ねる。


「桝谷と一緒に駅前のカラオケに行くらしい。今からでも間に合うと思うよ。」


「…ッ…それなら優くんも一緒に「江ノ島さん。」」


遮った優に、江ノ島は肩を弾ませた。


「無理にオレに気を遣わなくていい。別にオレは1人でいるのは苦じゃない。…正直グループとか疲れるだけだからな。」


「違う…。気を遣ってなんか…!」


「オレといると江ノ島さんの評判も下がるよ?…どうせ聞いたんでしょ?オレの噂のこと。」


「っ?!」


その言葉に江ノ島は押し黙る。


「…じゃあね、江ノ島さん。」


優は足早にその場を去る。

江ノ島はその背中を見送ることしか出来なかった。


──


次の日の昼休み。

最近のストレスの所為だろうか。

…腹の調子がすこぶる悪い。


今日も今日とて優は、桝谷のパシリになっていた。


「まじで下痢止め常備しようかな…。」


ブツブツ呟きながら優は、教室に急ぐ。



「…っせーよ、フジヤマ。お釣り没収。」


「悪い悪い、購買混んでて…。」


「ったく…。」


桝谷の小言の後、口を開いたのは松山だった。


「…たく…じゃないでしょ。また藤山くんに買いに行かせて…。藤山くんも嫌なら断りなよ。」


「は…はは。別に大丈夫。ちょ…トイレ行くね。」


優は足早に出口に向かう。

途中、お弁当を持った江ノ島と目が合う。


「…あ…。」


「ごめん、トイレ。」


何か言いたげだったが、無視してトイレに急ぐ。



…ヤバイヤバイヤバイ。

もっと怒られてもいいから先にトイレに行くべきだった。

過去イチの下り龍がオレを攻撃している。


出口のドアに手を掛ける。


「は?」


それは口から出てしまった。

…開かない。


鍵は…開いてる?


と言うことは教室の外で誰かが、ドアを抑えていることになる。


「…っざけんな、それどころじゃ…


…ねえっつーの!」


優は力任せに開けると、今度こそトイレに駆け出した。



「ふ…ふぅー…。」


ギリギリ間に合った。

とは言っても5時限目のチャイムはとっくになっており、目立つのは確定している。


「はぁ…。」


優はため息を吐いて、教室のドアに手を掛けた。


「…す、すみません…トイレに行ってて…





…は?」



優の目の前に広がって居たのは、誰もいない、もぬけの殻の教室だった。

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