懲役7億6898万7534.5年
弁護士のB氏はさきほどから重たいため息を吐きっぱなしだった。被告人A氏が犯した罪はどの面から鑑みても到底弁護の仕様がなく、差し当たっての問題は、A氏の刑罰をどれだけ軽くすることができるかだった。A氏には私選弁護士を雇うだけの蓄えがなく、B氏は国選弁護士として派遣されてきたのだった。
「なんで、やっちゃったんですか。」
面会室でA氏と対面したB氏は、もうそれ以外訊くことができなくなっていた。二重のアクリル板で遮られた二人の間には、重々しい空気が漂っていた。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
B氏はアクリル画に空いた穴に向かって弁解の言葉を喚き散らした。
「はぁ。ほんの出来心だと。」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
資料によるとA氏は、保育園に子供を迎えに来た女性のCさんを視姦したという。以前からCさんはストーカー被害を警察に訴えていたが、取り合ってもらえていなかった。A氏は現行犯逮捕されるその瞬間まで、何度となくCさんの後をつけまわし、よせばいいのにとうとうCさんのかけたメガネのレンズを、その視線で割ってしまった。騒ぎを聞きつけた保育士が110番し、A氏はその場で駆けつけた警察官によって逮捕された。そしてB氏が面会に現れた日も、そのまま桜田門の独居房に勾留されていた。A氏は新宿で捕まったために本来なら新宿署に送られるはずであったが、あまりに罪が重いため雑居房には入れておけないと判断されたのだ。
「くぁwせdrftgyふじこlp(私は死刑になるのでしょうか?)」
「おそらくは。わたくしも全力を尽くしますが。」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
最後の裁判の日。A氏は懲役7億6898万7534.5年の刑を執行された。割れたメガネのレンズはCさんがメガネを買ったメガネ屋で無料で新しく付け替えてもらえたことがA氏の罪を軽くした。裁判官が裁判の終わりを告げると、B氏はなんと生きづらい世の中になったものよと深いため息をついた。
完
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