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人類未満  作者: r_kobori
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〈九章〉決着

各々は分断後、大型倉庫に集まっていた。

もしなんらかの理由で作戦が失敗した時の集合地点である。

そこには多くの医療器具。そして全ての監視カメラと扉の開閉スイッチを有するモニター室が併設されていた。


そこには多くの仲間が集まっており、

少し遅れてリュウ達が入ってくる


訓練の成果もあり、確かに犠牲は少ない。

だが怪我人も多く、弾薬の備蓄も最初の総攻撃での消耗もあり残りわずかとなっていた。


リュウ(戦力が足りない...この状態で知能持ちを殺せるか...?)


リュウが案じている時にハルがレンを呼び寄せた


ハル「リュウさん!こっちに来て下さい!」


リュウはハルに連れられ、モニター室の映像を見る。そこには大広間の映像が流れおり、知能持ちエネミーと複数のエネミーが佇んでいた。

ハルの口から出された言葉にリュウは目を見開いた。


ハル「恐らく知能持ちエネミーは俺が思っているほど万能じゃない...俺の見立てが正しければ奴を殺せます」


リュウ「どう言うことだ。説明してくれ」


ハル「総攻撃の時、奴は周りのエネミーを統率しこちらの作戦を崩してきました。でも分散してからここまで来る時に幾つかのエネミーと接敵しましたが、エネミーの動き自体は単純で近くに複数のエネミーがいても真っ直ぐ向かってきました。」


リュウ「...何が言いたい」


ハルは続けた


ハル「つまり奴が細かな指示ができるエネミーは付近の数体のみ、他は大雑把な行動しか指示出来ない。そうじゃないと今も奴が大広間にいる理由が説明出来ません」


カイ(確かに俺らの惨状を知っていれば無理矢理にでもシャッターこじ開けて攻めてくるはず...)


ハル「作戦があります。聞いてください」


室内が静まり返った。

誰もが疲弊していたが、その目はまだ死んでいない。


ハル「知能持ちは、全部を見ているわけじゃない。認識出来る範囲は多く見積もってもその部屋のみです。」


リュウは腕を組み、黙って続きを促した。


ハル「だから奴にとって都合のいい現状を見せます。俺たちがまだ混乱していて、対応できていないって」


カイ「……囮か」


ハル「はい。でも人じゃない」


ハルはモニターに映るいくつかの部屋を指差した。


ハル「総攻撃で殺せなかったのは近くのエネミーが守ったからです。奴の指示範囲内に複数のエネミーがいれば殺すのは難しくなる」


レンは無意識に拳を握っていた。


ハル「倉庫に来る前、ここに閉じ込めたエネミーを解放します。同時にシャッターと扉を全て開ける」


一瞬、誰かが息を呑んだ。


ハル「知能持ちは“分断後に送った駒が生きている”と判断する。俺達が対応出来ていない為と」


リュウ「……だから動く」


ハル「はい。そして俺たちの生き残りを探す為にエネミーを放つはずです。」


カイ「その瞬間が、勝負どころか」


ハルは一度だけ頷いた。


ハル「でもこの作戦にはモニター室で扉を操作する人間が必要になります。その役を誰が担うか...」


その言葉に、レンが顔を上げた。


レン「……私がやる」


ハル「レン...お前また...」


その言葉をレンの決意が遮った


レン「銃が撃てない私がここに居ても何もできない...大丈夫!無茶をするつもりはないから」


一瞬だけ、ハルは目を伏せた。


ハル「……必ず生きて帰って来いよ。」


レンは小さく頷いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


知能持ちは、大広間の中央に立っていた。


周囲には、まだ駒がいる。

数は足りている。配置も悪くない。


血の匂いは薄い。

恐怖の反応も散発的だ。


ーー食糧が、逃げている


理解は即座だった。


生物は追い詰められると、必ず同じ行動を取る。仲間を捨て、弱い個体を置き去りにし、己の生存を優先する。


それなのに――


ーーなぜ、守る


先程から何度も、同じ光景を見ている。

動けない個体を囲み、逃げる速度を落としてまで庇う。

結果として、死ぬ確率を上げている。


ーー非効率


その時目の前のシャッターが開き、そこから数体のエネミーの反応を感じた


ーー殺しに行かせた駒が生き残った


ーー対応出来ていない。やはり逃げている


知能持ちは駒を前に出す。

索敵。追撃。回収。


その瞬間だった。


背後の気配が、消える。

音が、断ち切られた。


シャッターが落ちる。


ーー遮断


思考が一拍、遅れる。


命令は発している。

だが、駒からの反応が戻らない。


駒は合流した。

殺されてはいない。

逃げただけだと、判断していた。


ーーー誤算


その単語が思考に浮かんだ瞬間、

四方から光が向けられる。


銃口。


距離。数。角度。

即座に解析する。


ーー突破、不可


盾に使える駒がいない。

時間も、ない。


ーー理解した


食糧は、逃げていなかった。

分断され、誘導され、ここに集められた。


弱い個体を守る行動。

非効率な連携。

個としてではなく、群としての判断。


――群を維持するための選択。


個の生存ではなく、群の存続を優先する。

それが、人間という生物の戦い方。


ーー理解はできるが、そこに価値はない


銃声が響く。


一発目で、思考が途切れる。


それでも、最後に浮かんだのは感情ではない。


ーー次は...


その続きを考える前に、

アキの銃が、知能持ちの頭部を貫いた。


知能持ちエネミーの体が地面に伏した。

大広間に溢れんばかりの歓声が沸いた。

モニター室で、レンは深く息を吐いた。


レン(……終わった)


その瞬間だった。

ドアの奥の廊下、重く鳴るような足音


モニターには廊下の監視カメラが映し出されていた。そこにはシャッターで分断したエネミーの姿があった。


レン(そうだった...知能持ち以外はまだ...)


心臓が跳ねる。


以前の自分なら、考える前に動いていた。だがレンは、椅子から立たなかった。

レンは震える手で操作版を動かした。


通路B、シャッター半閉。

通路C、照明点灯。


エネミーの影が、モニター上で一瞬止まる。


レン「……今」


通信を開く。

絞り出すような声でレンは伝えた


レン「ハル、右側通路に1体エネミーが...」


返事は即座だった。


ハル「...了解。今行く」


エネミーが再び動き出す前に、背後に回ったハルの射撃でエネミーは倒れた。


レンは拳を握りしめたまま、動かなかった。


モニター室が静かになる。

レンはようやく椅子から立ち上がった。

手が遅れて震え出す。


レン(……怖かった)


さっきまで考えていた手順も、

シャッターの番号も、

今はもう曖昧だった。


レン(私、1人だったら……何も出来なかった)


床に落ちた銃を見る。

レンはそれを拾わなかった。


レン(次は...)


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