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人間未満  作者: r_kobori
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〈五章〉異変

三つの団が壊滅した。

残る二つの団も被害を受け、ネバーリサーチは団の全てをA団へ統合する事となった。


失った仲間を弔う暇もなく、アキとリュウ含む数名は襲撃の手掛かりを探る為、調査に励んでいる。


リュウ「やっぱりいねぇなぁ。エネミー」


調査隊一行は、電車が停まる危険地帯に突入した。

目の前には、もう動かなくなったC団のバンが倒れている。


調査隊メンバー「アキさん!リュウさん!これ見てください!」


リュウ「なんだよ……これ」


アキ「……なんでエネミーが、こんな事できるんだ……」


タイヤにはチェーンに付いた針が、深々と刺さっていた。

明らかに対バン用の罠であった。


調査隊メンバー「これって、つまり……」


リュウ「断定すんのはまだ早いだろ。先を急ごうぜ」


調査隊一行は森の奥へ進んでいく。

木々を越えた先、その奥で一行は言葉を失った。


おそらく人間の遺体。

その断定すら難しいほどに、遺体は無惨な姿であった。


左腕は失われ、耳や指も欠けている。

傷だらけの体の右半身は、すでにエネミーと化していた。


リュウ「一体……ここで何があったんだ……」


アキが遺体に近づいた時、何かを踏んだ感覚があった。

そこには手帳が、無造作に地面へ埋められている。


手帳には、行方不明となっていたC団戦闘員の名が刻まれていた。

アキは少し目を落としながら、ページを開いた。


手帳は、乱雑な字で殴り書きされている。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

予定ルートから外れ、森に迷い込んだ。

エネミーの数が異常に少ない。

足跡はある。だが新しいものと古いものが混ざっている。

「去った」というより「退いた」ように見える。


銃声を抑え、単独で偵察を継続。


———


日没前、異変。


四足型が三体。

通常なら即座に接近してくる距離だが、こちらを認識していない。

いや、無視されている。


その後、林の奥で“それ”を見た。


———


外見は他のエネミーと大差ない。

だが明らかに違う点がある。


・体表に傷が多い

・頭部が異常に肥大化している。

・歩行が不自然だが、転ばない


最も異常なのは——

周囲のエネミーが、そいつを中心に動いていること。


声は出していない。

だが、そいつが頭部を傾けるたびに、

周囲の個体が進路を変え、伏せ、散開した。


偶然とは考えにくい。


———


以前そのエネミーは

こちらの動きを“待っている”。


———


距離を取ろうとした瞬間、

背後のエネミーが動いた。


逃走を試みる。


森の中、明らかに誘導されている。

進路が“空いている”。


———


ここで確信した。


これは

狩りじゃない。

配置だ。


———


誰かがこの記録を読むなら、伝えておく。


・夜は安全ではない

・エネミーは偶然集まらない

・そして——


———


近い

音がしない

囲まれている


頭の歪んだ個体が

こちらを


――――――――――――

※以降、記録はここで途切れている

――――――――――――


長い沈黙の後アキが口を開いた。

アキ「少し前から嫌な予感はしてたんだ...それが確信になっちまった..」

リュウ「あぁ...知能を持ったエネミーが俺たちを狙ってる」

森の奥からの冷たい視線が今もなお孤児達を見ていた。


その頃A団基地では時間が忙しなく流れていた。

各基地から次々と物が運び込まれ、所狭しと並んでいる。作業してる子供達の中には怪我人も多い。


そんな時レンは検査を受けていた。

元軍隊基地であるA団にはシェルターには劣るもののC団とは比較にならない設備が整っていた。


だがそのどれもがレンを正常と示している。

カイ「本当に記憶がないんだよな」

そう聞くカイの首元には細いチェーンと小さな金属の飾りが揺れている。それはかつてサラの髪飾りに付いていた物だった。


レン「はい....エネミーに襲われてからは何も....」


カイ「エネミーの死体を見るに火器で一撃で頭を削り取られたってよりかは核となる部分を抉り取られたって感じだった...予測でしかないがレンは素手であの数のエネミーを殺してる。」


カイ「(それに避難所に飛び散った血には、確かにレンのものも混じっていた。それなのに外傷は見当たらない……説明がつかない)」


レン「....私は...人間なんでしょうか」


検査室に重い沈黙が流れる。

その空気を切り裂いたのはハルだった。


ハル「……結論から言う。お前が人間かどうかは、今は誰にも分からない。」


レンが俯く。

ハル「でもな、確かな事実が一つある」


ハル「お前は“守った”。

逃げなかったし、見捨てなかった

お前は俺の知ってる“レン”だ。

それが人間じゃないなら、俺はそれでもいい」


レンの目が見開いた。そこには涙が浮かんでいる。


基地にエンジン音が鳴り響いた。

調査隊が帰宅したようだ。


基地に入るなりアキが口を開く


アキ「みんな聞いてくれ。襲撃の真実と俺らの敵がわかった」


アキの口から語られるのは知能持ちエネミーの存在。そしてそのエネミーが敵意を持って自分達を殺しに来てると言う事。


誰も声を出さなかった。

それでも全員が理解していた。

——逃げ延びていたのではない。

ただ、まだ殺されていなかっただけだと。

そして同時に、

それを理解してなお、生きているという事実だけが彼らをここに立たせていた。

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