表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間未満  作者: r_kobori
4/5

〈四章〉目覚め

そのたびにバンの動きが、どんどん鈍くなっていった。

バンに次々とエネミーが飛び乗ってくる。


戦闘員「やばいぞアキ! このままだと突破できない!」


するとアキは、ベルトを座席に巻き付け、

そのまま体をバンの外へと投げ出した。


戦闘員「アキ!!」


だがアキは、ベルトを巧みに使って体を固定し、

不安定な姿勢のまま、バンに張り付いたエネミーを次々と撃ち落としていく。

さらに、襲いかかってきたエネミーを懐の拳銃で撃ち抜いた。


——バンは、再び動き出した。


戦闘員「ハハハ……バケモンかよ」


バンはA団を目指して進み続ける。

やがて一行は、孤児が捨てられるポイントへと辿り着いた。


そこで、アキたちは言葉を失った。


大量の血。

そして、孤児たちが着ていたであろう服が、無残に散乱している。


——孤児は、確かに来ていた。

だがそこに残されていたのは、到着と同時にエネミーに蹂躙された痕跡だった。



バンが危険エリアを抜けようとした、その時。

突如、車体が大きく揺れ、停止した。


アキ「何があった!!」


戦闘員「分からない!! タイヤがスリップして——!」


バンは旋回しながら、完全に動きを止める。


次の瞬間、四方八方から大量のエネミーが押し寄せた。

アキたちは、バンを捨てる決断を迫られる。


アキ「一人でもいい! 生きてA団に辿り着け!

 状況を伝えて、必ず助けを呼ぶんだ!」


明らかに、エネミーの動きは“作戦”に基づいていた。

その異様さを感じながらも、アキは武器を構え、死闘に身を投じる。



一方その頃、地下では非戦闘員たちが、

唯一銃を持つサラを先頭に進んでいた。


サラ「この先に緊急用の避難所があるから、

 みんなはそこで待っててねぇ」


レン「サラは……?」


サラ「私は他の団の状況を確認してくる。

 だから、みんなは待ってて」


その声は、優しくも微かに震えていた。


曲がり角を曲がると、避難所の灯りが見えてくる。

安堵した、その瞬間——サラの脳裏に、ある疑問が浮かんだ。


視力の低いエネミーが、夜に行動するはずがない。

だから、夜や地下は安全だった。


——その“常識”は、すでに壊れていたのだ。


気づいた時には、もう遅かった。


避難所には、B団、D団、E団のメンバー。

そしてその遺体と、それを狂ったように貪る複数のエネミーの姿があった。


サラ「みんな来ちゃダメ!!

 ハル!! みんなを連れて逃げて!!

 とにかく、遠くに!!」


言い終わるや否や、サラは銃を乱射する。


ハル「全員、ついて来い!!」


ハルは振り返らず、走り続けた。



しばらく走った後、背後からエネミーの足音が響く。

サラがいた方向からだ。


——ハルたちは、武器を持っていない。


レン「まただ……また、みんなが……」


その時、一人の年少者が、

地下道のぬかるみに足を取られ、転倒した。


ハル「まず——」


その瞬間、レンは迷わず年少者の手を掴み、前へ押し出した。

だがそれは、エネミーに追いつく“隙”を与える行為だった。


レン

(あぁ……これ、ダメかなぁ。

 カリア……カリアみたいに、できたかな……)


レンの体が、エネミーの波に飲み込まれていく。


ハル「レェェーーーン!!」


その叫びは、虚しく地下に消えた。



ハルは、レンを失った悲しみを呑み込み、前へ進んだ。

だが限界は、すぐそこまで迫っていた。


前方は鉄格子。

背後からは、複数のエネミー。


死を確信した、その時——

上のマンホールから、銃声が轟いた。


現れたのは、リュウ、A団戦闘員、

そしてアキと数名のC団戦闘員だった。


アキ「ハル!! 大丈夫か!!」


ハル「はい……でも、サラと……レンが……」


一瞬、アキの表情が後悔と動揺に歪む。

だがすぐに切り替え、ハルの頭に手を置いた。


アキ「……よく、みんなを守ったな」


ハル「……はい」


堪えていた涙が、溢れ落ちた。



一行は、避難所へと向かう。


リュウ「なぁアキ。おかしくねぇか?

 そこのハルくんの話だと、避難所には数体、

 地下道にも複数のエネミーがいるはずだろ?

 でもさっきから、姿どころか痕跡すらねぇ」


アキ「ああ……。とにかく急ごう。

 今できるのは、それだけだ」


避難所に辿り着いた時、

彼らは衝撃的な光景を目にする。


床一面に散乱する、黒いエネミーの血。

中央には、複数のエネミーの死体。


そして、その中で——何かが蠢いていた。


警戒する間もなく、ハルが駆け出す。


現れたのは、血まみれのレンだった。


魂が抜けたように倒れ込むレンを、

ハルは抱きしめ、泣き崩れる。



事件から数日後。


ネバーリサーチは、

A団とC団を除き、壊滅状態となった。

C団もまた、サラと戦闘員二名を失っている。


レンは、エネミーに捕まった後の記憶を失っており、

何を聞いても「覚えていない」の一点張りだった。


そして——

レンの血液検査結果は、『正常』だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ