〈三章〉前兆
アキたちがネバーリサーチに加入してから、数年が経っていた。
レンは血液検査を受けている。
検査係のカイと、カイに呼ばれた団長――アキも同席していた。
カイ「やっぱりおかしい。摂取量的にも、そろそろ血や筋肉量が変化してもおかしくないのに、一向にその兆しがない。遅すぎる」
レン「私以外にも、遅めの人っているんですか?」
アキ「いないわけじゃないけど……血も肉体も変わらない人は初めてだね」
カイ「どーするよ? 団長」
アキは腕を組み、少し考えてから答えた。
アキ「慎重に行くしかないな。初めてのケースだし、どんな危険があるかわからない。念のため、もう一度検査して――」
その時だった。
補給班の少年「アキくん! ちょっと来て! 緊急!」
普段は補給班として動いている、戦闘員の少年が駆け込んできた。
アキが連れ出されたのは見張り台だった。
補給班の少年「エネミーの数が異常に少ない! 罠用の豚肉を使っても、全然出てこないんだ!」
アキ「トラブルは重なるもんだねぇ……。報告ありがと。すぐに他の団に連絡。それと、会議の準備お願いできる?」
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その頃、診察室では――。
カイ「全く、あの人も忙しないな……。……うん、再検査の結果も変化なしだね」
レン「……なんで、私だけなんでしょう……」
カイ「そう不安がることもないって。こんな場所、抜け出したら不要になるものだから」
レン「……はい」
それから数ヶ月間、エネミーはほとんど姿を見せなかった。
その裏で悲劇が水面下で進行していることに、誰も気づかぬまま時は過ぎていく。
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団長たちは定期的に会議を開き、今後の方針を話し合っていた。
そこには、アキの同期でありA団団長でもあるリュウの姿もあった。
B団団長「B団の報告だが、あれから五ヶ月、エネミーは出現していない」
アキ「左に同じーく。調査隊を組んで散策してみたけど、効果なしっ」
D団団長「今のうちに食料を備蓄するべきじゃない?」
E団団長「でっ、でも! もし罠を敷かれていたらどうするんですか!」
リュウ「エネミーの知能は、カラスや犬程度だぜ? そんなことあるか?」
B団団長「そして、関連性があるかはわかりませんが……あれから孤児を乗せた電車も確認できていません」
アキ「不定期って言ったって、開きすぎだもんなぁ」
B団団長「異常事態が続いています。皆さんも警戒を深めてください」
リュウ「ちっ、ボス面しやがって」
アキ「落ち着けよ、リュウ。まとめ役を買ってくれてるんだ」
リュウ「わーってるよ」
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会議が終わり、団長たちはそれぞれの拠点へ戻っていく。
そんな中、リュウがアキを呼び止めた。
リュウ「今回の件、どう思うよ?」
アキ「不穏……って言葉で終わらせるには、異常すぎる」
リュウ「あの時の事件。調査前に肉を摂取してたメンバーで、生き残ってるのは俺たちだけだ」
リュウとアキは、肉の摂取量の安全ラインを大きく超えていた。
アキ「減ったなぁ……。でも俺が守るべき命は増えてる。気、引き締めようぜ!」
リュウ「……だな!!」
⸻
数日後の夜。
C団の拠点に警報が鳴り響いた。
『襲撃! 襲撃! 大量のエネミーが接近中!!』
拠点内は混乱に包まれる。
「エネミーは夜は動けないんじゃなかったのか!?」
騒然とする中、レンはこの地に来たばかりの頃を思い出していた。
その時、アキが指示を飛ばす。
リュウ「戦闘員は武器を持って前に!
非戦闘員や年少者は地下に急げ! サラ、みんなを頼む!」
手短で的確な指示。
レンたちはサラの誘導で地下へと逃げた。
アキたちは武器を手に、次々とエネミーを撃ち抜いていく。
弾は確実に頭部を貫くが、圧倒的な数の前に次第に押されていった。
戦闘員「どうするアキ!? 今からでも地下に逃げるか!?」
アキ「いや、駄目だ! 奴らが夜でも動けるってことは、地下が安全とは限らない!
今逃げたら、間違いなく追ってきて、他のみんなに危険が及ぶ!!」
戦闘員「なら、どうするよ!?」
アキは数秒、考え――。
アキ「陸路でA団まで向かう!
そこでエネミーを倒し、地下でみんなと合流する!」
A団は旧軍事基地を拠点とし、リュウ率いる強力な戦闘員が揃う団だ。
戦闘員「正気か!? A団へ向かうには孤児たちが降ろされるポイントを通る事になるぞ!」
アキ「この状況ならどこも危険に変わりない! 急ぐぞ!!」
アキはバンを走らせ、
長年住み続けた拠点を後にした。




