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人類未満  作者: r_kobori
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〈二十三章〉救済

数日後、一行は次の施設へ向かう途中だった。

収穫は少ない。

どの施設も似たような情報ばかりで、決定的な手がかりは見つからなかった。


レンの焦りは、日に日に強くなっている。

その時、ルーカスが手元のパソコンを見ながら頭を傾けた。


ルーカス「…?少し止まってくれ。」


車はその場で停止する。

ルーカスはパソコンを操作し、静かに告げた。


ルーカス「…おかしい。ここだけ電波が乱れる。何か他の場所から強い電波が流れてるみたいだ…」


カイ「方向は?」


カイは地図をその場に開き、ルーカスがパソコンを見ながら指を指す。

そこには市街地の文字。現在地の真横であった。


レンが窓から顔を出し、その方向を見る。

視線の先には、高い柵に囲まれた街があった。


カイ「避難所の一つか?時間もない。スルーして次の施設に…」


ハル「…いや待て。この柵、傷一つない。」


ハルが言葉を遮る。今までも柵に囲まれた街はいくつかあったが、

どれもエネミーによる攻撃の跡があった。

しかし目の前の柵は、不自然なほど無傷だった。


レン「行きたい」


全員が振り向く。


レン「もし…生存者がいたら、何か分かるかもしれない」


カイは少し迷った。

レンの目を見る。

そこには、静かな決意があった。


カイ「…分かった。けど短時間だけだ。少し調べたらすぐ戻るぞ。」


レンは静かに頷いた。そして一行は静かな街へと足を踏み入れた。


街は異常に静かだった。

街の中央には電波塔があり、電波はそこから流れていた。

同じような形の家が立ち並び、道の奥には大きな教会が建てられていた。

平和な時代から時間が止められたような街が少し不気味に思えた。


レンが大声で呼びかける。

その声は街に反響するのみで返事はない。

一行はそのまま近くの家に入っていった。


家の中にもエネミーが入って来た痕跡は見受けられなかった。

机の上には皿が並べられており、

1人分のご飯がそのまま放置されている。

壁には子供に描かれた絵が飾られている。

母親と少女が並んで描かれており、その隣は黒く塗り潰されていた。


リビングの奥の扉がひとつだけ半開きの状態で揺れていた。

扉を開けるとその先は地下へと繋がっている。


1人が通るのがやっとな階段を降りて行き、地下室へ辿り着いた。

地下室を見た瞬間にレンは息を呑んだ。



そこには――


檻があった。

中には一体のエネミーが、鎖で繋がれたまま死んでいる。

檻の中には爪で引っ掻いたような跡が所々にあった。


エネミーが侵入した形跡は、何処にもない。

地下への階段も、エネミーが通れるとは思えない。


その傍らに、小さなワンピースが転がっていた。

血に染まり、ボロボロになった、子どもの服。


割れた皿の周りには、料理が散らばっている。


レンは思わず息を呑み、後ずさった。

体が机に当たり、その上にあったであろう日記が地面に転がる。


震える手で、レンはそれを拾い上げた。


そこにはアンナ・ハインと書かれていた。


ーーーーーーーーーーーー

2月3日

夫が変わった。

教会の教えに従い、エネミーを「神の使者」と呼ぶようになった。

明日、教会に行くらしい。話だけでも聞いてみようかな。


2月4日

教会で話を聞いてみた。

エネミーに変容する事が、神への昇華であり救いらしい。

少なくとも、エネミーに殺されるよりかは良いと思った。


2月10日

夫が地下室で何かをしている。

「神に近づくための研究だ」と言うが、私には理解できない。

娘も心配している。


2月12日

つい夫の研究を覗いてしまった。

彼はエネミーの皮膚や血液を調べていた。

信じられない。エネミーを好奇心で傷つけるなんて


2月15日

夫と口論になった。

「貴方は神を冒涜している」

そう叫んだ。

夫は何も言わなかった。

娘が、パパの絵を黒く塗りつぶした。


2月20日

夫が家を出て行った。

「失望した」とだけ言い残して。

娘は泣いている。


3月5日

熱が出た。

体が、おかしい。

教会の人が言った。

「変容は昇華です。神に近づいている証拠です」


でも、怖い。

夫に相談すれば良かった。


3月10日

もう、我慢できない。

地下に、自分を閉じ込めた。

娘には、近づかないように言った。


3月▪️日

自分が人間じゃなくなる▪️を感じる。

皮膚が所々黒く▪️ってきた。

頭▪️痛い。苦し▪️。

▪️れが試練▪️んだろ▪️か。



お腹が空いた

ーーーーーーーーーーーー



それ以降、文字はない。

ただ、ページには血の跡だけが残っていた。


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