表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類未満  作者: r_kobori
22/31

〈二十二章〉代償

誰もいない、静かな研究所。

人類がシェルターに逃げる段階で見捨てられた、かつてはエネミーに関する研究をしていた施設が数十年ぶりに目を覚ましていた。


外からは数体のエネミーが走り寄ってくるが、次の瞬間には頭を撃ち抜かれ、地面に倒れる。しかしその銃声が次々とエネミーを

呼び寄せ、気付けば研究所は囲まれ始めていた。


ハル「…っ!そろそろ限界だ!急げ!」


屋外からの声が響く。

外壁に爪が立つ音が、はっきりと聞こえ始めていた。

金属が軋む音に誰もが顔を強張らせる。

室内ではレンが限界まで書類を抱え込んでいた。パソコンからデータを抜き取ったルーカスがレンを急かす。


ルーカス「急ごう。もう充分だ。」


レンが走ると同時に幾つかのファイルが地面に落ちる。手を伸ばそうとするが、拾い上げるよりも早くカイの手で車に乗せられ、そのまま研究所を後にした。


カイが地図を開き、残りの燃料を確認しながら基地への帰還を促した。


その手つきは、以前のリュウに比べればまだ不慣れだ。

だが、誰も文句は言わない。

カイがリュウの代わりを担うしかないと、誰もが理解していた。


リュウがいれば、もっと的確に、もっと速く判断できただろう。

その不在が、今になって痛いほど分かる。


シェルターを脱出してから、三ヶ月が経っていた。


基地は定期的に移し替えながら

ネバーリサーチは各地の研究所を巡り、エネミーに関する資料を集めていた。


今日訪れたのは、五つ目の施設だった。


帰りの車の中での会話は無かった。

銃の点検と手入れをするハル、持ち帰ったデータを確認するルーカス、

周囲の安全を確かめるカイ、

そんな中レンは1人、窓の外を眺めてシェルターから脱出した時の事を思い出していた。


助けられなかったナギ、逃げ道を作ったリュウ、その命の重さが胸の奥に佇んでいるのを感じた。


そしてリュウが遺した書類。

脱出の翌日にカイの口から皆に共有されたのは

リュウの研究結果についてであった。


ーーーーーーーーーーーー

・体にエネミーと酷似した細胞を確認。

→摘出不可。

・エネミーへの変容に対する耐性を確認。

・許容容量を超えてエネミー由来の成分を摂取した場合にのみ変容。

・筋繊維や骨の膨張、強化を確認。

→それにより、血管や神経が圧迫され、死亡のリスクが大きい

・意識回復の見込みなし

ーーーーーーーーーーーー


肉体強化における代償は寿命という形で体を蝕んでいた。


レン(それまでに....絶対...)


レンはネバーリサーチで唯一、エネミー肉による肉体強化がない。

その事にレンは安堵は一切感じなかった。

仲間を失う恐怖が、レンの心に大きく広がっていく。


カリア、ナギ、リュウ。

もう、これ以上失いたくない。


レン(時間がない...)


寿命。それは確実に、仲間たちを蝕んでいく。

今は元気でも、いつか――


レン(だから、私が...)


何ができるかは分からない。

でも、じっとしていられない。


レンが拳を強く握りしめる。


その時、隣のハルが小さく声をかけた。


ハル「...大丈夫か?」


レン「...うん」


短い返事。

ハルは何かを言いかけたが、結局言葉を呑み込んだ。


ハル「...無理すんなよ」


レン「......」


答えは返ってこなかった。

ハルは、それ以上何も聞かなかった。


窓の外を流れる景色だけが、静かに変わっていった。


レン(もう....失いたくない)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ