〈20章〉再会
レンは感情を飲み込むよりも先にナギへの心臓マッサージを開始した。
その時、全てのシャッターが開く。
ヴィクターはナギが情報を隠している事を察し、非常事態への準備をしていた。
ルーカスの通信が届く。
ルーカス「シャッターの操作を奪われた。警備員が向かってる!離脱しろ!」
カイ「レン!逃げるぞ!」
カイはレンに駆け寄った。だがレンの耳に、仲間の声は届かなかった。
レンは一心不乱に心臓マッサージを続ける。
それでもナギの亡骸は揺れ動くだけで、ナギの目が開く事はない。
レン「駄目....嫌だよ...」
通路の奥で銃声が鳴った。
跳弾が床を抉り、火花が散る。
カイは歯を噛み締め、独り言の様に呟くレンの体を抱きかかえた。
レン「カイ....離して!まだナギが....」
カイ「状況をよく見ろ!お前までも死ぬ気か!」
カイはあえて強い言葉でレンを律した。
レンはナギの喪失を受け入れ、声にならない叫びを上げた。
カイは即座に近くの部屋に逃げ込んだ。
車を手にしたハルと落ち合う地点までかなりの距離がある。
カイは肩にかけた銃に触れた。
カイ(俺にこれが扱いきれるか....?)
その銃はアキが使っていたものであり、改造され威力と反動が高くなっている。
リュウの救出に向かわした他メンバーの行方も分からない。そんな中、カイは小さく息を吐き、首にかかったサラの遺品を祈るように掴んだ。
カイ(今の俺に出来る最善を...)
魂が抜けたように動こうとしないレンを連れ、部屋から飛び出す。
移動を始めて間も無いうちに警報が鳴り始めた。それに呼応する様に警備員が集まり始める。
カイは銃を構え、進行方向に向かって発砲した。
カイ「...っ!」
その反動に顔をしかめる。弾は狙いは外れたものの、かろうじて警備員に命中し、進行方向を切り裂いた。
2人は足を止めずに走り続けるうちに中庭に到達した。
その瞬間、四方八方から銃口が顔を出す。
カイ(....くそっ!誘導されてたのか...)
カイは必死に周りを見渡し、逃げ道を探すが、何処にもない。
息が荒くなる。
自分の選択は本当に正しかったのか。
自らの選択で仲間を死に追いやってしまったのか。
そんな言葉が頭の中で反芻する。
その時、上から懐かしい声が聞こえた。カイは考えるよりも先に
その声に従い、銃を2階へ投げた。
リュウは窓から飛び出し銃を掴み取り、カーテンを使って体を固定した上で、その場の警備員を撃ち抜いた。
カイはその姿にアキの面影を見た。
リュウはそのまま飛び降り、カイの頭を撫でながら告げた。
リュウ「よくやった。後は任せろ。」
言葉は短い。それでも確かにリュウそのものであった。
カイは考えるよりも先に、その声に身を委ねた。
張り詰めていたものが、音もなくほどけていくのを感じた。




