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人類未満  作者: r_kobori
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〈一九章〉戻ろうとした道

早朝、シェルターには光が降り注ぎ暖かい陽気で満ちていた。

研究員が到着する少し前に施設も目を覚ます。

入り口が開き、電気が着いた瞬間に施設の全てのシャッターが一斉に閉じた。


カイ「リュウの居る研究室は奥だ!行くぞ‼︎」


レンを含めた数名が走り出す。ルーカスはパソコンを操作し、進行方向の必要最低限のシャッターのみを開けていく。

住み込みで働いている研究員が非常ベルを鳴らそうとするが反応はなく、警備員もシャッターに閉じ込められていた。


作戦通りに接敵せず進むなか、

通路の上ーーダクトからナギが急襲した。


ナギ「ここの地図用意したん誰やと思ってんねん」


進行が一瞬止まる。だがレンが素早く飛びかかり、手元の通信端末でシャッターを閉めさせる。

レンとナギのみがシャッターに閉じ込められてた。


カイ「っく....お前ら先行け!」


シャッターを一枚隔てた場所でカイが立ち止まり、他のメンバーは再度リュウに向かう。


ナギ「何で正面突破なんよ...他にも楽な方法あったやろ」


ナギが呟く

スタンガンは初撃で落とし、シャッターの向こう側にある。

奥歯を噛み締め、ナギはレンに殴りかかった。


実際には数分。だがナギの中ではすでに数時間が経っている様な感覚に陥っていた。

レンはナギの攻撃を正面から受け止め、反撃もせずに殴られ続けている。

ナギの動きには血の滲む様な訓練が見て取れた。

何度ナギが倒してもレンは起き上がる。


ナギ(何でや...再生能力はあれど、痛みは感じるんやろ?何でそんなに...)


ナギ「...何で反撃せんのよ」


レンは真っ直ぐに前を見て答えた。


レン「話をしに来たから...戦いに来た訳じゃない。」


ナギ「...アホやろ。僕は裏切ったんやで?」


レン「助けてもくれた。」


ナギの肩が震える。それは単なる怒りだけではなかった。

動きが鈍くなる。


ナギ「...っ。その目ぇやめろや!」


ナギが渾身の力でレンを殴り飛ばした。

レンの体は宙を舞い、勢いよく壁に叩きつけられた。

それでもレンは立ち上がる。先にナギの拳が限界を迎え、皮膚が剥がれ血が吹き出す。


レンが静かに告げる


レン「私は...私達が生きる為に、誰かに苦しんで欲しくない。

そんな未来じゃ本心で笑えなくなる。」


ナギの息が上がり、涙が滲む


ナギ(なんで....)


レン「私はナギが苦しむのはやだ。」


ナギ(何でこの人は...)


レン「私は...ナギと皆んなで笑っていたいんだよ。」


ナギ(何でこの人は...離れてくれへんねん)


ナギの目から涙が溢れ出した。振り上げた拳を下ろし、その場に倒れ込む

抑えていた感情が一気に溢れ出した。


レン「...行くよナギ。一緒に逃げよう!」


レンは震える声で手を差し出した。

ナギはゆっくり顔をあげ、涙でぐしゃぐしゃになった顔でレンを見た。


ナギ(僕も...こんな僕でも、みんなと...)


ナギがゆっくり手を伸ばす。

その手がレンに触れる。


ーーーーその瞬間、ナギの体が痺れ、掴み掛けた手はそのまま地面に落ちていった。


レンは目の前で起こった事を飲み込みきれない。

ナギの体が倒れる。レンは我に返ったようにナギの脈を調べたが、反応はない。


監視カメラの奥で、ヴィクターは思わず息を吐いた。

それは安堵に近い吐息だった。


ヴィクター「……はは」


小さな笑いが漏れる。

だがそれは抑えきれず、次第に大きくなっていった。


ヴィクター「ははは……はははははっ!」


彼は椅子に深く腰掛け、愉快そうに手を叩く。


ヴィクター「そうか、そうか……戻ろうとしたか。いやぁ、助かるよ。本当に」


指先を組み、モニターを覗き込む。


ヴィクター「ありがとう。私に君を殺す理由をくれて」


画面の中で倒れたナギを、祝福するように見つめる。


ヴィクター「情がある。迷う。選び直す。それで“善人”のつもりか?違うな」


彼の口角は、もはや隠す気もなく吊り上がっていた。


ヴィクター「だがこれでいい。契約はなくなった。もう手加減も、遠回りも、全部いらない」


彼は楽しそうに指を鳴らす。


ヴィクター「さぁ……収穫を始めよう」

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