〈十八章〉前夜
深夜、建物の電気が次々と消えていく。
シェルターには冷たい静寂が流れている。
殆どの人間が寝静まる中、ネバーリサーチが使用している倉庫ではカイが落ち着きなく何度も書類を見直していた。
そんな中、一つの人影が重い足取りで倉庫に入っていく。
ドアが開いた瞬間にカイは駆け寄った。
カイ「どうだった!?怪我は?」
そこにいたのはハルであった。
ハルの手には銃が握られており、その服には血が付着している。
ハル「....大丈夫。俺は...人を殺せる。」
ハルの表情は沈んでいるが、その目には決意が漲っていた。
ハルが向かっていたのは門の操作室。そこには警備員が巡回しており、作戦の為に指定した時間に門を開ける為の細工と、それを当日まで隠す事が必要不可欠であった。
脱出作戦は翌日まで迫っている。
重い空気が流れる。ハルが銃を置き、カイに告げた。
ハル「...多分今動ける人間の中では、俺が1番強い。だから明日、車両の事は俺に任せて欲しいんだ。」
淡々と事実を語る。元の作戦ではカイも車の確保に回されていた。
カイ「...分かった。」
ハル「ありがとう..。それともう一つ、明日何かあったら...レンを止めて欲しい。」
カイ「レン...?」
ナギの裏切り後にルーカスの権限も没収されてない事や、逃げる用の車両も奪われていない事。そして今までの不可解な行動からネバーリサーチはナギを単なる裏切り者とは思って居なかった。
明日の作戦にはそのナギを連れ戻す事も組み込まれている。
ハル「あいつは自分の理想を突き通せる奴だ...だけどその理想を叶える為に、色んな物を躊躇なく捨てやがる...それが自分の身であったとしても。」
一瞬の空白の後カイは答えた。
カイ「...無理するなよ。」
否定はしない。飾らない優しさがそこにはあった。
ハル「あぁ...ありがとう。」
そこから2人は床に就き、翌日に備えた。
同日の日暮れ前、政府の施設ではいつも通りリュウの検査が続けられている。
そんな日常の隙間に研究員達の愚痴が溢れていた。
研究員A「前の侵入者、例の孤児が目的らしいぜ」
研究員B「マジかよ...場所変えねぇで大丈夫か?」
研究員A「侵入者を誘き寄せるのに使うとか聞いた」
研究員B「おいおいそれ俺らの身も危ねえじゃねえか」
研究員達は不安を消しきれないまま1人、また1人と家に帰って行った
完全に外が暗くなり、研究室に残っているのはリュウと1人の研究員だけとなった。
その1人が帰りの支度を終わらせ研究室のドアに手を掛けた瞬間、何者かが後ろからその手を掴み、反応する間もなく研究員を地面に伏せた。
リュウ「ふぅ...やっと隙を見つけたぜ」
リュウは自分についた幾つもの管を引きちぎり、その場にあった書類を拾って研究室から脱出した。
リュウ「あいつらと合流しねぇとな...」




