〈十四章〉真相
レンとハルは階段を駆け上り、
警備員からの逃走を続けていた。
その行く手を阻むように目の前のシャッターが落ちる。振り返れば
後方のシャッターが動き始めていた。
ハル(まずい...閉じ込められる)
レンは滑り込みながら弓を構え、
その場にいた警備員を即座に撃ち抜く。首は外れているが、痛みで動きを止めるには充分であった。
レンが息を整えた時に
棟を繋ぐ渡り廊下からも警備員が
向かってきているのを目にした。
ハルが硝煙弾を投げレンを連れて
その場から離れる。
ハル「大丈夫か?!」
レン「うん...問題なし!」
そう言うと2人はまた走り出した。
警備員は増え続ける。
気を抜けばシャッターで締め出される。覚えたはずの施設の地図はとっくに頭から抜けていた。
ハル(おかしい...明らかに警備員の
数が多過ぎる...俺らが来るのが分かってたのか?)
するとハルの後ろでレンが足を躓かせた。見ると体は汗だくで息も上がっている。レンはハルと違い、エネミー肉での肉体強化が出来ておらず、その体は限界を迎えていた。
後ろからは変わらず警備員が追ってくる。
ハル(くっそ...こんな時に...)
ハルはレンを抱き抱え走り出したが、すぐに警備員に追いつかれてしまう。ハルは行き止まりに追い詰められる。その時、ハルと警備員の間にシャッターが降りた。
ハル(...っ!?連携ミスか?)
ハルが逃げ道を探す為、辺りを見渡した時に聞き覚えのない声が聞こえる。
???「早くこっちだ!そこもいつ開くか分からない!」
ハルは一瞬身構えながらも他に
レンを担ぎながら逃げれるルートも見当たらない。
ハルはその男の誘導に従い、地下に逃げた。
「どこに行った?」「遠くには行ってない筈だ!探せ!」
上から警備員の声が聞こえる。
ハルはレンを離さないまま懐に隠していた銃を構えた。
男は手を挙げて何も持っていない事を示す。
???「大丈夫。敵じゃないよ。
まぁ疑うのも無理ない。」
すると男は水とタオルを取り出し、
2人の足元に投げた。
ルーカス「私はルーカス。ルーカス・ヴァレン。ここは点検用の通路だから滅多に人は通らない。その水も未開封の市販品だ。もし疑うなら渡してくれればいくらでも飲むよ」
ハルはキャップを確認し、少量口に含んで味にも問題ない事を確認した上でレンに手渡した。
ハルはまだ銃を下さない。
ハル「目的はなんだ...?」
ルーカス「...過去への贖罪だよ。少しついてきてほしい。君達に伝えないといけない事があるんだ」
暗い路地を歩いていく。地下と地上を繰り返しながら
カメラがなく、人通りも少ない道を3人は進んでいた。
いくつものビルの間を抜け、それはハルとレンの目の前に現れた。
2人は足をとめ、ただただ呆然とそれを眺めていた。
レン「.......旭孤児院だ」
次の瞬間、2人の脳内をいつかの幸せな記憶が駆け巡る。
あれから7年。孤児院のものはどれも記憶より小さく見えた。
だが、孤児院は電気も付いていなく、人が居る様な気配はない。
孤児院の中に入り、ルーカスが壁に触れると、どこからともなく音がして地下への入り口が開いた。
レン(こんなのがあったんだ...)
ルーカス「この中だよ。暗いから階段気をつけてね。」
そのまま降りて行くとある地下室へ
辿り着いた。そこは地上とは違い
空気が重く、冷たい。
灰色のコンクリートで囲まれており、所々に苔が生えている。
そこまでの広さはないが、同じ色のファイルが所狭しと棚に詰め込まれており、奥には扉が見える
レンが自分が生まれた年のファイルを取り出して開く。
そこには懐かしい面々が並んでいた。顔写真・名前・性別。知っている情報の中に孤児院には似つかない文字が刻まれていた。
2歳〜10歳。輸送完了。
ハル「...レン...これ..おかしい」
ハルを見ると別の年代のファイルを握っている。その顔には疑念と恐怖が浮かんでいた。
ハル「これ全部に孤児の事が書いてある...」
レン「....え?」
レンは顔を上げる。壁一面に並べられた棚。その全ての帯に年代が綴られていた。
中身はどれも変わらず顔写真・名前・性別。そして2歳〜10歳。輸送完了の文字。レンが目を見開き、
ハルが震える声で呟いた。
ハル「なんでこんな数の孤児が、こんな広い年代で出て来てるんだよ...」
レンが手に持っていたファイルを落とす。すると扉が開く音がした。
ルーカスが奥の扉の向こう側に座っている。
レンは奥の扉に目を向ける。
無意識に、足が止まっていた。
レン(……見たくない...でも見なくちゃいけない気がする)
レンとハルは目を合わせ、同時に奥の部屋に入った。
そこには自分達の半分ほどの大きさの培養槽が30個ほど並んでいる。
そして壁に立てかけられたホワイトボード。失敗の文字が目立つ書類。
見た事のない様な量の試験管。
そこに答えはもう揃っていた。
呼吸が荒くなる。体が震え、視界が狭まる。息が肺に溜まらず、透き通る感覚。
ハルはその場に膝をつき、嗚咽を漏らした。
孤児とは研究の末に生まれた人間に満たない存在であった。




