〈十一章〉帰還
カイはその日のうちに緊急会議を開いた。
会議室にはカイ、レン、ハル、そしてナギと数人の戦闘員が集められている。
カイ「さっき伝えた通り、リュウが倒れた。今は安静にしているが、目は覚めてない。」
会議室の空気が重くなる。
カイ「ここの設備じゃあその原因は分からなかった。だからここに居るメンバーでより高質な設備のあるシェルターに向かう事になる。」
皆がざわめいた。今まで何度かシェルターを目指した事があったが、成功した事は一度もない。その原因はエネミーにあった。だか今、先の決戦で近くには殆どエネミーが居ない。そんな中ナギが静かに手を上げた
ナギ「あの...餌として捨てられた俺らをはたしてシェルターが受け入れてくれるんでしょうか?」
当然の疑問である。孤児達はエネミーをシェルターに寄せ付けない為の餌として使われてきた。ネバーリサーチの中にはシェルター内部の人間を恨んでる仲間が大勢いる。するとカイは棚から何かを取り出した。
カイ「最悪の場合これを使う。」
C団にあった調査書である。
場が騒然とした。調査書はアキやリュウの同期達が命をかけて調べた内容が書かれている。
それの重要性は言わずもがな皆が理解していた。
ハルが短く質問した
ハル「この人選の意味は?」
カイ「シェルターまでどれだけの距離があって、そこに何があるか分からない中、持っていく食糧や装備は最低限にしたい。俺が必要だと思った最善のメンバーだ。」
カイは一人一人の選出理由を説明していった。
医学に精通しているカイ、そのサポート兼身体検査の必要性が高いレン、カイが居ない時のリーダーで高い射撃スキルを持つハル、エンジニアに転向し、移動用のバンの修復・点検を担うナギ。そしてもしもエネミーと接敵した際の為の数名の戦闘員...
カイ「残りのメンバーは基地の修復と孤児が来た際の保護の為に残ってもらう。...何か質問はあるか?」
誰も声を上げなかった。確かに合理的な判断だ。質問もない。だが確かな不安がそこにはあった
カイがそれを察したように続ける。
カイ「みんなが不安に思うのも分かる...だけど俺らはあのエネミーの猛攻を2度も生き残ったんだ。俺はそんなお前らが安易死ぬとは思ってない...必ず全員で帰って来れる」
カイの言葉は皆の不安を取り除く
のには充分だった。
そして2日後、3台のバンが基地から飛び出し、シェルターに向けて
動き始めた。
バンは一列に並び、線路の真横を並走しながらシェルターに向かう。
あの時この地に連れてきた線路は
今となってはシェルターに続く道標となっていた。
先頭のバンは機動力と索敵重視。
最も高性能なエンジンを搭載し、
中には戦闘員が乗っている。その中にはレンもいた。
2番目のバンにはリュウといくつかの医療器具、食糧が積まれており
カイがそこでリュウを看ながら指示を飛ばしている。
最後尾のバンには腕利きのメンバーが集められており、指揮をハルが担っている。
バンは順調に進んで行き、周知の範囲を超えシェルターへ近づいていく
そんな時にレンが進行方向に三体のエネミーを発見した。バンのエンジン音を聞きつけたようだ。
レン「前方にエネミーがいる!見える範囲で三体」
通信を受け取ったカイは皆に合図を出した。
カイ「作戦通りに対処するぞ」
そう言い終わるや否や戦闘車両は大きく旋回しながらエネミーを引きつけた。リュウを乗せたバンはその場で停止。最後尾のバンがエネミーを挟むように後を追い、前後からの射撃でエネミーを討伐した。レンの射撃が一体のエネミーの眉間を正確に打ち抜いた。
だが、その感触はすぐに胸の奥へ沈んでいった。
一行は時折エネミーを討伐しながら
線路沿いに進んでいった。
そして出発から5日、レン達は初めて外からのシェルターを目にした。
その巨大さは希望の象徴であると同時に、数え切れない犠牲の重みそのものだった。




