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第2話 絶望、敗北者の姿

光を感じる。


嫌に眩しいわけではなく、温かく包み込まれる。


……っは!あいつは⁉


飛び起きてあたりを見回す。


だがそこは見知らぬ場所。


どこかの森の奥地だ。


なぜこんなところに?


まあいい。


もう一度あいつと戦わなければ。


負けたまま帰るわけにはいかない。


しかし、どこに向かえば…


ん?今草むらが動かなかったか?


気づいた時には遅かった。


そこから荷車ほどあるでかい狼がよだれを垂らして飛びかかってきた。


まずい、食われる!


腕を前に出し、身構える。


…痛くない。


というか、噛みつかれてすらいない。


狼は俺の下にある何かに噛みついている。


狼につられ顔が下を向く。


「な、なんだこれは⁉」


そこには白骨化した人の死体があった。


狼はそれに食らいついていたのだ。


いや、そんなことより…




俺の体、透けてね?




足、胴、腕、隅々まで見てみる。


が、どこを見ても半透明。


体の傷もなくなっている。


どうなってる?


いや、まさかそんな…


絶望の崖っぷちに立たされた俺をそれは容赦なく崖の底に突き落とした。


モールド、ネヴィ。


二人の眩しい笑顔が入ったペンダント。


それがこの死体の首にかかっていた。


嘘だ…


だが、こんなもの二つとあるわけじゃない。


違う、信じない。


だが、愛する家族を見間違うはずがない。


信じたくない…



この死体は俺の。



「嘘だぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


力任せに地面を殴る。


だが、なにも感じない。


痛みも、衝撃さえも。


突然さっきまで骨をかじっていた狼の首が動いた。


目線の先はペンダントのついた首の骨。


「おい……やめろ!」


ペンダントごと首の骨に噛みつき、引き離した。


「それはお前のじゃない!返せ!」


狼に向かって殴りかかるが、体を通り抜けてそのままの勢いでこけてしまった。


「頼む、それだけは…!」


そんな言葉が届くはずもなく、狼は森の奥に消えていった。


なにも守れなかった。


騎士としての信念も、息子との約束も、あのペンダントでさえも。


なにが最強の騎士だ。


たくさんの犠牲を出し、あまつさえあいつに傷一つつけることができなかった。


俺は無力だった。


こんな力でなにが守れるというのだ。


茶色く濁った感情に頭が侵されていく。


こんな姿になってどうしろというのだ…。


途方に暮れたまま日が昇り、沈んでいく。


森の木は生い茂り、そして散っていく。


それでも、こびりついた錆のように汚れた感情は消えることはなかった。

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