第四話:白と黒
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:1448
ワタシの家から一番近い「ミッド」の町。そこはとても活気にあふれていた。
ワタシはこの町に来るのが初めてだったので、関門で身分証をまず発行してもらった。勿論、キセキの分も。
持ち物検査などは厳重にされたが、発行自体は無料だった。キセキの正体にも気づかれずに済んだようだ。
町の中に入ると、商人が多いように感じた。商人だけでなく、露店の数も多い。この町は商売がかなり盛んだと知ってはいたけど、想像以上だ。
ワタシは今日の目的地、ギルドへ向かう。
辿り着いたギルドの建物が予想の5倍くらい大きく、面食らう。
よく見てみると、冒険者組合だけでなく、商業組合、魔法研究所など色々な施設が一つにまとまっているようだった。それならこの大きさも納得だ。
ワタシは建物の左側、冒険者組合に向かった。
建物に入るなり早々、ガラの悪そうな男達に話しかけられる。
「よう嬢ちゃん、こんな所に何の用だい?」
ワタシは聞こえないフリでスルー。
「おい、無視かよ?」
…。
「おい?聞いてるのか?」
「煩いですね、ワタシに何か用ですか?」
予想外の反応だったのか、男達は一瞬フリーズする。
「シエル様?」
「いいよ、放っといて行こう。時間は無限じゃないよ。」
呆気にとられる男達をしり目に、ワタシ達は受付へ向かった。
「あら、お嬢さん、今日はどういったご用件かな?」
「ワタシ、冒険者登録しに来ました。登録お願いします。」
「うーん、お嬢さん、おいくつ?」
「昨日で10歳です。」
「そう、じゃあ、ギリギリ登録可能だけど…冒険者って、お嬢さんが思ってるより危ないと思うよ?大丈夫?」
「理解しています。」
「じゃあ、登録手続に入るけど。お連れの方は?」
「あっ…じゃあ、私もお願いします!」
そして、ワタシ達の会員カードが完成した。
【シエル
会員ランク:D
レベル:21】
【キセキ
会員ランク:D
レベル:34】
「いや~、シエルちゃん、レベル21もあるんだね。ここまで上げるの大変だったでしょう?」
「良い師に恵まれたので。」
ワタシの師匠は、母様である。でも、母様の名を出すと、登録の時に伏せておいた身分がバレてしまうので、そこは上手く濁しておいた。
「キセキさんは、お姉さんなんですか?」
「え、私ですか?うーんと…。」
「友達のようなモノです。」
「なるほど、そうなんだね。」
関係性の設定をよく考えていなかったので、ボロが出そうになった。何とかフォローしたが、キセキはこういうことを考えるのは苦手なはずだから、注意が必要だ。
「それにしても、いつもここはこんなに騒がしいんですか?」
「ううん?今日は特別なの。「白と黒」がこの町に来るんだって。それでみんな一目見ようと、ここに集まって来てるの。」
「「白と黒」…!」
「シエル様、白と黒って何ですか?」
「「白と黒」は、有名な冒険者の二人組だよ。それぞれ「純白の聖女」「漆黒の魔剣士」の称号を持つ…。」
「そうなんですね!こんなに人が集まるほど人気なんですね。」
「冒険者の頂点と呼ばれる事もあるくらい凄い人達なんだよ。」
ワタシも少し興奮気味だ。初日から憧れの冒険者の姿を見れるかもしれない。
ただ、全てが上手くいくわけもなく…。
「おい、嬢ちゃん。さっきは俺らの事、無視してくれたよな?」
「一般人なら許してやったが…冒険者登録したんだってな。」
「俺達、冒険者は、舐められてたらやっていけないんでな…。」
…めんどくさいことになった。
4/50話です。
レベル20は普通の大人レベル、30だと少し鍛えているかなくらい。50や60を超えるくらいだと超人の域です。
いずれはシエルも…。