第二十三話:魔物が暴走した
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:2596
視点:ミロ
わたくしは、夜の町を保全するため、ギルドで見回りの依頼を受けました。
パニャさんの時のような事件がまた起きたら、危ないですからね。
特に、「ユニオンリーフ」、あれは危険です。もしあれに捕まってしまえば、落ち葉の山の中で誰にも気づかれず、喰われるのを待つのみになってしまいます。
落ち葉の堆積した場所が特に一番危ないですから…そういった場所を重点的に見て回るのが良さそうですね。
………。
「エクラさん?バレていますわよ。」
「…!バレていましたか。気配は抑えていたつもりだったんですけど…。」
「わたくしなんて覗き見してどうする気でしたの?」
「…それは。パニャさんが、ミロさんに助けられた時の事を話してくれたんですが…。かっこよかった、って何度も言うものですから、気になってしまって。あと、ミロさんの戦闘スタイルから何か学べるかもしれないな、と思ったんです。」
エクラの冒険者ランクは、最初より一つ上がってCになっていますわ。でも、Bランクに満たない為に、シエル様からは留守番を命じられてしまいました。シエル様達に追いつくために、もっと成長したいのでしょう。
「いいですわ。ついてきても。」
「ありがとうございます!」
この子が強くなれば、シエル様の戦力強化にも繋がりますからね。断る理由も特にないと思いますし。
というわけで、今夜は二人での見回りとなりましたが…。
「何か、嫌な気配がしませんか?ミロさん…。」
「…気のせいかと思っていましたが、そうでは無いようですね。」
気配のする方角は、関門の辺り。今は関門は閉じられているはず…
わたくし達はその方向へ向かいました。
近付くにつれ、大きな音が聞こえるようになった。何かを叩くような…。
「これ、無理やり門をこじ開けようとしてませんか!?」
…間違いない。エクラの言う通り、何者かが関門を無理やり突破しようとしている。しかもこの音…もう長くは持たないかもしれない。
「少々、不味いな…ですわね。」
関門に到着すると、そこには大きな獣の魔物が居た。案の定、関門を力づくで破壊しようとしている。
鉄格子はぐにゃぐにゃに曲がってしまっている。その魔物が入るにはまだ小さい隙間しか出来ていないが、朝までは持たないだろう。
「エクラ、さん…こちら側から攻撃をお願いします。我…じゃなかった、わたくしは背後から攻撃しますわ。」
「え、どうやって後ろに回るんですか…」
彼がその言葉を言い終わる前に、我は水魔法を地面に打ち付けた。
「アクアブラストっ!」
その反動で我は高く飛び上がり、門の向こう側へとひとっ飛び。流石にこのまま落下すると危ないので、着地時にもう1発「アクアブラスト」。
これで魔物の背後に回り込んだ。そして魔物も我に気付いたようで、ゆっくりとこちらの方へ振り向く。
…この魔物は我のデータにはない…。いや、似た魔物なら知っている。「ウルフベア」という、狼と熊が合体したような魔物だ。だがウルフベアは大きくても今の我の2倍くらいの身長のはずだ。この魔物はどう見ても我の4倍くらいある。流石にこの差は個体差では済まされないだろう。
「我がこの魔物を引き付ける!敵の後方から攻撃魔法を頼む!」
「ミロさん…?」
あの口調にも慣れてきたつもりだったが、未だに焦ると素が出てしまう。だが今はそんな事はどうでもいい。
「アクアブラスト!」
この「アクアブラスト」は、攻撃性能はそこそこだが、水圧により相手を怯ませたり、この前のように軽い物を吹き飛ばしたりするのに便利な魔法だ。この魔物の図体でも多少は不快と思ってくれるだろう。
我はそのまま「アクアブラスト」を連射する。ちなみに、我はスキル「詠唱省略」を獲得しているので、連射二発目以降は魔法名の宣言は必要ない。
…一度撃った魔法は二度と宣言を必要としない「詠唱破棄」もあるらしいが、高度過ぎて我には無理だ。
そして、かれこれ3分くらい「アクアブラスト」を撃ち続けたが、敵の動きが弱まるわけでもなく…。
しかし、敵は大振りな攻撃しかしてこない様子だ。これなら回避も容易い。まだ我の魔力も99%以上残っている。更に、こちらには仲間も居る。
「ヘルゲート!」
3分待った甲斐があったというものだ。ふーむ、中々いいじゃないか。
しかし。地獄の門から吐き出されたその魔物は、何事もなかったかのように立ち上がり、攻撃してきた。
「…効いていないのか。」
「ヘルゲート」を使ったエクラの魔力はほぼ残っていないだろう。こうなってしまったら、彼には何もできまい。
「すいません、ミロさん!なんとかもう1発…。」
「いや、もういい!あれが効かないなら、お前の魔法では無理だ!」
「…では、どうすれば?」
「そうだな…ここは我に全て任せてくれ。」
さて、ここは出し惜しみせずに、我の最高出力をお見舞いしよう。全魔力の70%を消費する必殺…。
「コラプスウェーブ…。」
全てを押し流す波。単純な威力もさることながら、発動後しばらくの間は相手の足をすくって体勢を崩させるという点でも優秀な魔法だ。そして、これで残り魔力は約29%だが…。
我には「暴食」がある。
隙だらけの敵に、左手で吸収を仕掛ける。体力、魔力を奪う。
我の体力は元から消耗していなかったのでほぼ元通り、魔力も95%程度まで回復した。
これを繰り返すのが我の戦い方。相手の攻撃を全て回避し、消耗した分の体力と魔力を相手から直接回収する事によって、いつかは相手が力尽きて倒れる。そういう算段だ。
だが今の吸収した感覚だと、あと200回くらい吸収を繰り返さないと相手の体力が尽きない気がする。それでは、朝が来て、この戦いを見られてしまう…。我の「暴食」の発動シーンも。
まぁ、もうそんな事はいいだろう。先程の1回目の発動の時にエクラには見られてしまったし。ここを突破されない方が何倍も大事だ。
…何故大事なんだ?我が人間の心配をしている?馬鹿な、まだここに来てからたった10日程しか経っていないのに…?
でも、我はエクラや、パニャを失いたくない、そう思っている気がする。
…雑念は戦闘の邪魔だ。
我は2発目の「暴食」を撃ち込む。幸い、敵の動きはずっと大振りなので、隙を見て吸収をする事は容易い。
3発目…。
4発目…。
…78、いや79か?
もう数えるのも面倒になってきた。そして空が明るくなり始めた。
80回目…?
その時、突然聞き覚えのある声がした。
「よぉ、苦戦しているみたいだな!」
23/50話です。
ゆっくり更新していく気ですが、あまりにもゆっくりすぎて何しようとしてたか忘れそうです。
あとなんか迷走し始めててきついです。




