第二十二話:夕暮れ
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:2316
視点:シエル
モネ達が話している間に、ワタシはキセキを連れて大木の葉の影に来た。
「…この木って、まさか…。」
「そうだよ。こんな大それた事を出来るのは、あいつしかいないよ。」
「…七色、第四席。「木」の…」
「フフッ、そうだよ!久しぶりだね、キセキちゃん。」
姿は見えないが、声は聞こえる。というか、念話だ。
「大将も、久しぶり。いや、初めましてと言うべきだったかな?アハハッ。」
「久しぶりだね、シン。」
七色第四席、「木」のシン。その正体は元素を司る七属性の精霊、そのうちの一柱だ。木属性の精霊であるシンは、特殊スキル「木霊」で、植物を司る力を持つ。更に、植物を介して一定の範囲内なら、見る、聞く、話す(念話)など意思疎通に加え、範囲内なら力の行使も可能らしい。
「暗闇の洞窟」では、エリサが植物として媒体となり、能力を発揮できたのだと思われる。あの子も一応、植物だから。
「それよりさぁ?キセキちゃん、ヒドくない?僕やアキラに黙って、一人で出ていくなんてさ。」
「ん…うーん、それは…でも、シンさんは私がどこに居ても追跡出来るじゃないですか!だから、大丈夫かなって…。」
「へぇー。火山を通ったりしてたから、位置把握にとっても苦労したんだけど…わざとじゃ、ない、よ、ね?」
「それは…。」
ワタシには分かる。それはわざとである。
「キセキ、誤魔化しは効かないよ。とりあえず謝ったらどう?」
「…はい。追跡を逃れようと火山地帯をわざと経由しました。あそこなら植物が無いから、シンさんの目を搔い潜れるかと思って…。すいませんでした!」
「そうだね。流石に噴火してすぐの火山にはほとんど植物が無くて、僕の目になるものは無かった。でも、火山の周りには植物はたくさんあるから、常にそこを全て監視しておくことで、再びキセキちゃんを見つけて、追跡を開始出来たんだよ。フフフ…僕の目を欺こうなんて数万年早いんだよ~。」
「数万年って…!それ精霊の時間感覚じゃないですか!」
キセキも数万年くらいなら生きるのか?ワタシはふと思った。天使の寿命については、人間の文献には載っていなかったし、魔王時代にも分からなかった。
まぁ、今はその話はいい。シンには一つ頼みたい事があったのだ。
「ねぇ、シン?」
「なーに、大将?」
「その、大将って呼び方、続けたいならいいけど…今のワタシには、シエル・アルカンという名前が…」
「それは知ってるよ。キセキが大将と会ったところからずっと見てたからね。でも、僕の中で大将は大将なんだよね。僕は大将って呼びたい。まぁそもそも、名前に拘りを持つのなんて人間くらいだからねぇ。」
「今のワタシは人間なんだけど…。」
「あ、そっか。もう昔のままとはいかないか。でも、大将は大将なんだよなぁ。これだけは変えられないよ。」
「ワタシも、以前と同じように「シン」って呼んでいるし、大丈夫だよ。
それより、シンにお願いしたい事があってさ…。」
視点:シン
「やぁ、聞こえるかい?」
僕は大将の指示を受けて、その子に話し掛けた。
「は、はい!?誰ですか?」
対象の名は…エリサ。洞窟内を見る時に媒体にさせてもらった、アルラウネの子だ。
「僕はこの大妖樹の、木の精だよ。大妖樹そのものと言ってもいい。」
これは勿論嘘だ。ここまでの大樹だと、木の精が現れてもおかしくはないけど、今の所現れる気配はない。でも、この樹は僕の分体といってもいいものなので、僕が木の精として活動することには問題は無い。
「大妖樹…というのですね、この樹は。」
「そうだね。一般にはそう呼ばれているよ。最も、僕が生えられる場所はかなり限られているから、その名前もそんなに知られていないけどね。」
「あの…大妖樹様、私、大妖樹様からたくさん魔力を吸ってしまったのですが…どうすれば…?」
あぁ、それでずっと樹の周囲をウロウロしてたのか。ずっと気にしてたらしい。
「心配ないよ。君が吸収したのは僕のエネルギーの3%ほどに過ぎないし、その程度吸収されたところですぐに再生するから。それより、君の力が増した事の方がよっぽど重要だと思う。」
「そ…そうなんです。私の中で今まで感じた事のないくらいの魔力が渦巻いていて…!」
実際、大妖樹に寄生した時に、エリサのレベルは大幅に上昇している。それ以前はレベル45くらいだったのに対し、今はレベル70くらいにはなっている。
ちなみにこれが分かるのは「木霊」のスキルの能力のおかげだ。僕は植物の事なら何でもわかる。たとえそれが魔物であろうと。
「うんうん。僕の魔力を吸い取ったらそうなるよ。むしろ、その状態で生きてる方が珍しいと思うよ。大抵の植物は、僕に寄生しようものなら、魔力の過剰供給で自壊してしまうからね。」
「ひえぇ…そうならなくて良かったです…。」
「君が元々ある程度の力を持っていたから、過剰供給にも耐えられたんだろうね。」
「…で、さ。ちょっと聞いちゃったんだけどさ。君、お友達が欲しいんだって?」
「は、はい!欲しいです…。独りは寂しいです。」
「じゃあさ、僕がお友達になってあげるよ。」
「大妖樹様が…?」
「ダメ?」
「そんな、そんな事は無いです!とっても嬉しいです!でも、私なんかと…いいんですか?」
「お友達っていうより、共生、仲間かな?僕は君に必要な魔力を供給する。君はこのダンジョンに問題が起こらないように整備する。そういう関係?ね、いいでしょ?」
「なるほど…!では、喜んでお友達にならせて頂きます!」
大将…これでよかったよね?後で褒めてよね…!
22/50話です。
シン、新登場!7話でチラっと登場してますが。
ちなみに無性別、見た目&自認女の子、一人称僕の謎キャラです。
モチベーション低下と体調悪化により更新が滞りました。
本当に完成するのかな、この小説。
このまま2か月1話ペースだと4年くらいかかる?w
そうはならないように頑張ります。




