第二十一話:契約は此処から
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:4518
なんか思ったより長いぞこの章。誰だ4500文字も書いたやつ。
視点:シエル
この炎は放置したら不味い。
ワタシが思考を巡らせていると…。
「大将?」
どこからか声が聞こえた。
「一つだけ忠告しておくよ。足元注意!」
この声…「大将」という言葉…もしかして。
ワタシが確信に至る前に、メキメキという音が足元から聞こえ始めた。
そして、地面の岩盤を突き破って、大木が姿を現す!
「うわっ、何だこれ!?」
そして大木は物凄い勢いで伸び、天井を突き破り、そのまま伸びていき…
ついには、洞窟の一番上まで貫通してしまった。貫通した穴から、微かに光が差し込む。
そして、大木の周りに蔦が伸びていく。まるで階段のように…。
ちなみに、天井が崩れた時の破片も全て、伸びた枝が弾いてくれた。
「僕の力じゃ、火を消す事は出来ないけど…逃げ道を用意する事は出来る。さ、大将、逃げて。」
「…ありがとう。」
ワタシは周囲の三人(三体)に声を掛ける。
「この木が燃える前に、逃げよう!」
「了解です、シエル様!エリサとエミルスも、こっちへ…!」
「でも…私…」
「あー…エリサがこっち側に来るには、この木に寄生しないといけないか…。」
「そうです…!私がそんなことしたら、木から養分を吸い尽くして、崩落してしまうかも…。」
どうやら、彼女は自分よりこの大木が枯れて折れる事を心配しているようだ。
「でも、このままだと、貴女、焼けてしまうんじゃ…。」
「…モネさん。短い間でしたが、貴女と過ごせたこの時間、とても楽しかったです。エミルス君も。二人とも、私の分まで…」
「ストップ!まだ諦めちゃダメだよ。エリサさん、こっちに来て。大丈夫だから。」
ワタシは、エリサの別れの言葉を制止する。この子を見捨てる訳には行かない。植物を大事にしないと、怒られちゃうからね。まぁ、元より置いていく気なんて無いけど。
「え、でも…。」
「いいから!」
「…はい!」
エリサは壁に這っていた根を全て収納すると、新しく根を数本出し、大木に巻き付かせた。
「…!この木、物凄いエネルギーを感じます…。これなら大丈夫です!」
そのままこちらに乗り移ったエリサは、上を見て言う。
「光…。」
「姉貴、あれが「日光」ってやつなのか?」
「そうか…エリサとエミルスは、日光を見た事が無いのね。そう、あれが日の光。」
目を輝かせる二人。
「ごめん、今はそれどころじゃない!早く上に上らないと!」
勢いを増す炎。ワタシ達は逃げるようにして上層の階まで上がった。
地上に近付いてきた辺りで、キセキと合流した。まとめ役だった男も一緒だった。
「シエル様!」
「おお、お嬢ちゃん。無事だったのか!下で何が起こったんだ?それと、お嬢ちゃんはどうやって下の階層に行ったんだ?」
ワタシは嘘を交えつつ説明する。ワタシは限定的な転移スキルを使えるということ(これは嘘ではないが、条件は隠しておいた)、それで下層に突撃したら、「非人」と、魔物のモネ達が交戦していたこと、そこに加勢する形で戦闘に参加したこと、その結果、「非人」は倒されたこと。しかし、「非人」が放った炎を消す事が出来ず、窮地に陥った…ところにこの大木が生えてきて、難を逃れたこと。
「なるほど…ダンジョンの性質変化が起きたってわけか。」
納得して貰えたようだ。そう、ダンジョンは、内部で大量のエネルギーの移動があると、性質変化を起こして属性が全く違うダンジョンに変化する事があるのだ。それを知っていたワタシは、自然な性質変化であると思わせる事によって、この大木が人為的に生まれたものであることを隠した。
「木の根元はまだ燃えています、この木が倒れる前に、早く脱出しましょう。」
モネは少しでも倒壊を遅らせようと、木の周りに糸を何本か張り巡らせ、支えようとしている。
「心配しなくても、この木…「大妖樹」は、火の力をも取り込んで自分の糧とするから、焼け崩れることはないんだけどね?」
「…それはもっと早く言ってほしかったよ。」
説明も面倒なので、そのまま進む事にした。
大木は、洞窟の一番上を貫通するだけでは飽き足らず、更に上まで伸びていた。とんでもない生命力の木だ。
地上に降り立つと、周囲には冒険者や一般市民がごった返していた。野次馬だろう。
そりゃあ、こんな天変地異が起こってたら、みんな気になるよね(他人事)。
ワタシ達の前に、ギルド職員らしき女性がやってきた。この整った姿勢、恐らく元冒険者かな?ほとんど隙が無い。
「貴女がシエルさん、こちらがキセキさんですね。ここで何があったのか、状況説明をお願いします。」
ワタシは先程、男に話したのと同じ内容を話した。
「なるほど。ということは、こちらのお三方が、その魔物と言うわけですね。」
「そう。アラクネがモネ、スライムがエミルス、植物のがエリサ。」
「ふむ…。アラクネに、ルナスライム、アルラウネですか。正直、脅威度が高すぎて私達の手には負えませんね。どうしましょうか…。」
発言の割には、女性は落ち着いている。
「もし、エリサやエミルスに手を出すなら…」
モネが女性を威嚇しようとするが、ワタシが制止する。
「ストップ。そうやって危険性を見せつけたら、余計に処遇が悪くなるかもしれないから、大人しくしておいた方がいいよ。」
と、ここでワタシは当初の目的、月属性魔法をシュヴァルツさんとエクラに伝授する事、その為にモネを連れ帰る事を思い出した。
「あの、ワタシがこの子達と従魔契約してしまえばいいのではないでしょうか?」
「え?」
ここで冷静沈着な女性が、怪訝な顔をした。想定外の一言だったのだろう。
従魔契約をしてしまえば、魔物は主人の意思に反する行為は出来なくなる。そうしてしまえば不用意に人間に危害を加える事は無いから安全、という事だ。
「モネは別にいいでしょ?」
「…はい、私はシエル様なら…。」
「姉貴がいいなら、オレも…!」
「わ、私は…うーん…?」
「そうよね、迷うわよね。でも私は、シエル様となら間違いはないって思うわ。私を信じてくれるならだけど…。」
「私は…。モネちゃんを信じます!」
思ったよりすんなり受け入れられてしまった。モネはともかく、他二人は警戒心のかけらもない。地下深くで他者にあまり触れなかったせいか…?
「じゃあ、契約を…。」
従魔契約は、悪魔契約とほぼ同じ形式で行われる。というかこの二つはほぼ同じものなんだよね。従えるのが悪魔か、魔物かの違いだけ。
「契約事項、まず一番大事な所。人間を「不用意に」傷つけない事。敵意のある者や、悪意を持った者は手を出してよし!
それで、ここからは個別の契約になるよ。まずモネは、ワタシの知り合い達に魔法を教えてあげて欲しいんだよね。
エリサは、このダンジョンの管理を頼みたいかな。ダンジョン内は今、滅茶苦茶な状態だけど、木属性が強いから、エリサなら適任だと思う。
エミルスは…まぁ自由にしていていいよ。でも、このダンジョンは環境がかなり変わっちゃったから、君には合わないと思うな。」
「オレはどっちにしろ姉貴に着いていこうと思ってたんだ。だから姉貴と一緒に魔法を教えられたらな、なんて…。」
「いいと思う。じゃあ、エミルス君はそれで。
ワタシからの条件の提示は以上だよ。不服な部分とかある?あるなら変えるけど。」
「私達にも意見する権利を下さるのですか…!?」
「フフフ、シエル様はそういう事をする方なのよ。私は何も文句は無いわ。私の魔法を必要としている子が居るなら、喜んで教師になるわ。」
「オレもなにも文句は無いぞ!」
「私は…ダンジョンの管理…実は元から私がここのダンジョンボスなので…。大丈夫だと思いますが、モネちゃん達が居ないのはちょっと寂しいですけど…。」
「そうだよね、モネも「非人」も、後から入ってきたわけだから、エリサがダンジョンボスだったんじゃないかって察しはついてたよ。…寂しい、か。その点については、多分解決すると思う。少しだけ待っててくれれば。」
「あ…ありがとうございます!私、独りが苦手で…。」
「そうだったの?だからあの時、私を快くダンジョンに迎え入れてくれたのね。」
「う、うぅ…思わぬ弱点を晒してしまいました…!」
そうして、ワタシ達の契約は完了した。
ワタシは再び職員の女性との話に戻った。
「…とりあえず、魔物の脅威は無い、と。まさかいきなり契約しだすとは思いませんでしたが…。」
「暫くはこれでこのダンジョンは安全だと思います。性質は大きく変わりましたが、大きな脅威は取り除かれた。そして、エリサの管轄下なら暴走の心配は恐らくないです。」
「…それよりも、私が気になるのは、シエルさん、貴女の事かもしれません。何か不審な点があったら、報告するように言われているのですが…。」
「不審な所…?」
「本人に直接言うのもおかしいと思われるかもしれませんが…。貴女ははっきり言って、異常ですね。転移スキルを使えるとはいえ、生きて帰れるか分からないダンジョンの最下層へ躊躇いもなく行って、そして、脅威を排除して生還した。更に、脅威度の高い魔物達を一瞬で従えてしまいました。正直、ここまでくると貴女自体が脅威とみなされてもおかしくないですよ。まぁ、「不審な点」は無かった、と報告しますけれども。」
「何故?ワタシは脅威かもしれないのに?」
「…私の目で見て、貴女は脅威になる人間ではないと判断しました。貴女は冒険者たちの避難も手伝ったようですし、魔物たちからの信頼の置かれ方を見ても、貴女が邪悪な人間には見えなかったのです。少なくとも、今の時点では。そもそも、不審な点というのは、「人間に害をなす可能性」を見ろ、と言われているのと同義なのです。まぁ、明らかに子供の範疇を超えている事は確かなので、それは報告させて頂きますが…。」
「なるほど。」
「まぁ、私が言いたいのは、ギルドは貴女の事を悪いようにはしないってことです。安心してください。」
話が終わった後、後ろを振り向くと、モネとエリサが別れの言葉を交わしていた。
これから暫くはモネがここに戻って来る事は無いだろうから、最後に話させてあげようと思い、ワタシはしばし離れたところで待つことにした。
視点:モネ
「シエル様って、モネちゃんの言ってた「魔王様」なんですよね?」
エリサにそう言われ、私は少し驚いた。
「…もしかして、さっきの私とシエル様の会話、聞こえてた?」
上の階層に居たエリサには、届かないくらいの声で話していたつもりだったのだけれど…。
「んー?どの時かは分からないけど、多分聞こえてないですよ。」
「じゃあ…どこで分かったの?」
「え?そりゃあ、モネちゃんがあそこまで信頼を置く相手って、「魔王様」か、いつも話してた仲間達くらいしか居ないと思ったんですよ。従魔契約をすんなり受け入れた所で、「魔王様」の方だなって思いました。その反応を見る限り、正解みたいですね?」
「あら…エリサは何でもお見通しなのね。参ったわ。」
「いやいや、あんなに「魔王様」の事を何度も話してくれたら、私じゃなくても分かりますよ~?多分。」
…私は少し恥ずかしくなってきた。
「で、私も今日からはその「魔王様」…もとい、シエル様の仲間ってわけですよね。これからもよろしくお願いしますね、モネちゃん!」
「う…うん、よろしくね、エリサ。」
21/50話です。
投稿が途絶えてたのは、短編を書こうとしていたからです。失敗しましたが。
こっちの話の事結構忘れてしまったので、一から読んで確認し直さねば…。
やりたい事は色々あるので50話にはたして収まるのかどうか。




