第二十話:心の支え
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:1800
「魔血召喚。」
ワタシは「魔血召喚」を使用し、現場に降り立った。
「何者ダ…?」
「人間っ…!?一体どうやってここまで…転移魔法?」
ワタシの左右から声が聞こえてくる。まずは左、蜘蛛の胴体からヒトの身体が生えた魔物。つまり、アラクネ。
そして右は、恐らく「非人」と呼ばれる者…だが、もはや人間の原型を留めていない、異様な化け物。
流血したのは、アラクネ…つまりモネの方だ。彼女が精神生命体でなくて良かった、精神生命体は血液を持たない事が殆どだから。
「貴様モ儂ノ計画ノ邪魔ヲスルノカ?」
「邪魔?」
「ダンジョンノ活動ヲ異常活性化サセ、都市ヲ滅亡サセル計画ヲ…。」
「…正直、計画なんてどうでもいいよ。ただ、お前は一つ過ちを犯した。」
「過チ…?」
「お前はワタシの仲間を傷つけた。覚悟しろ。ここがお前の墓場だ。」
「亜空切断」
「グガッ…!?」
「今ので死なないんだね。じゃあこれも追加で。」
「耐性貫通」
「中核破壊」
「ガァァァア!!!」
「邪魂浄化」
…。
「邪魂浄化」…その名の通り、邪悪な魂を浄化するスキル。誰が判断するのかは知らないが、邪悪とみなされた者に極大ダメージを与え、対象の命が尽きた場合魂を浄化し、輪廻の輪に返す。ダメージを与えずに浄化だけ行ったりも出来るし汎用性も高い。超強力なスキルだ。
勢いで使っちゃったけど…このスキルを使うと「残滓吸収」が働かなくなるから、本当は今回は使わなくて良かったと思う。その前のスキル三つ使用であいつは瀕死だったし。でもムカついたからやっちゃった。
ちなみに、先に使った三つのスキルについて。「亜空切断」は指定した位置で空間を切り裂くスキル。威力もさることながら、発動までのラグが非常に短く予備動作もほぼ必要ないのが強力。「耐性貫通」は、敵がどんなに装甲を固めていようが、魔法耐性が高かろうが、それらを全て無視出来るスキル。「中核破壊」は相手の心臓部にダメージを与え、破壊するスキル。
これらは、魔王のスキルの中でも強力な部類だったため、魔王もよく戦闘で使用していた。なので人前で使うと、ワタシと魔王の繋がりに気付かれるかもと思い、使わなかったのだが…
今の戦い、いや蹂躙を見ていたのは、モネと、上の階層から見ていたあの植物型の子と、モネを追って出てきたスライム?の子だけ。観衆が居たわけでもない。だから今は使って良かったと思う。
「…貴女様は、もしかして…。」
モネが話し掛けてくる。モネは胴体がひしゃげ、左腕と顔が血みどろの状態だ。彼女は頑丈なのですぐに死んだりする事は無いと思うが、ワタシは回復手段を探す。
キセキは上層に置いてきてしまったし、ワタシ自身は回復魔法はあまり得意ではない。今は少なくともワタシの回復魔法の使い時ではない。
…そうだ。父様から貰ったアーティファクトなら?
ワタシは首からペンダントを外し、代わりにモネの首に装着した。すると、ペンダントが桃色と緑色に輝きだし、モネの怪我はみるみる治っていった。アーティファクトに仕込まれた「ヒール」の効果だ。
呆気にとられるモネに向かって、ワタシは言う。
「七色、第五席。「虫」のモネ。アラクネまで進化したんだね。」
ワタシは子の成長を喜ぶ親のような気分だ。「親」は正確には、ワタシじゃなくて魔王だけど。
「やはり、先程のスキルは。魔王様、ご復活されたのですね。」
「魔王様、とは呼ばないで欲しいな。今のワタシは人間で、魔王の頃とは違って名前もある。ワタシの名はシエル。シエル・アルカン。」
「シエル…様。素敵な響き。」
「あ、それはいいんだけど。あの炎…消さないと不味くない?」
「不味いです…。私、焼けそうで…」
上の階にいる植物娘はこのままだと枯れてしまいそうだ。それ以前に、このまま延焼していけば、ダンジョンの壁や天井が崩れて、ワタシ達が生き埋めにされる可能性もある。
ワタシだけなら、「魔血召喚」を上層の魔物の血で発動させれば逃げられるが…。ここにはモネとその仲間達がいる。ならば、この炎を消火しないと…。
「モネ、この場に、水属性魔法を使える者は居る?」
「…私とエミルスは月属性、エリサは木属性しか…。」
「うーん、不味い…か。」
水属性…といえばミロだけど、あの子にはエクラと留守番を頼んであるからここには居ない。他に何か方法は…?
視点:???
「全く、世話の焼ける大将だなぁ。」
僕は久しぶりに力を使う事を決めた。
「いっちょ、やってしまいますかぁ!」
20/50話です。
最近時間が取れず全然書き進んでいません!
今回のボスキャラ「非人」についてはいずれもう少し掘り下げようかと思っていますが予定は未定
最初のボスである「エクラの元上司」についても少し言及しようかとも思っていますがそれも未定
計画性皆無。こんなんで50話書ききれるんですかね。もう分かりません。