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第十七話:問題児

1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。

この話の文字数:2165

「おい!連絡くらい寄越してくれたっていいじゃないか、心配してたんだぞ!」

再会した兄様の最初の一言がそれだった。いや…ぐうの音も出ない。その通りだ。

ワタシは、キセキを連れて実家に戻ってきていた。そろそろ顔を出さないといけないと思ったのと、ルミネの町に行くには南の森を通るのが一番近いが、森までの道中に実家が位置していたからだ。

「それで、ソイツは誰なんだよ?」

兄様はキセキの方を指差す。

「…兄様は分からないかぁ。父様と母様は分かるでしょ?」

「…まぁ、なんとなくは。」

「私はしっかり分かってますよ。ふふっ。」

「…?母様の知り合いなのか?」

…まぁ、兄様には分からないままでいいや。

そして、今なら分かる。キセキが家族に何故かすんなり受け入れられたのは、キセキのスキル「印象操作」が働いていた事が原因だったと。自分を「欲しい」と思わせる効果を持ち、キセキが悪い人間達から付け狙われる原因ともなった、常時発動の(パッシブ)スキルだ。常時発動なので、勿論、魔王もその影響を受けてキセキを仲間として迎え入れたとも言える。まぁ、それが失敗だと思ったことは一度も無いけどね。

「それより兄様、ワタシはもう立派な立派なBランク冒険者だよ。」

「そ、そうだな…。そうらしいな。」

「兄様は進捗どうなの?研究者への道は。」

「魔法学校の試験に受かったんだ。再来月からそこで勉強する予定だよ。」

「魔法学校…もしかして父様の母校の?」

「そうだ。「王立第三魔法学校」。」

「兄様も着実に一歩ずつ進んでるね。感心。」

「お前は進むのが早すぎるんだよ…!」

…それは確かに。ワタシの中には10歳分の経験値以外にも、200年分の魔王の経験値とスキルが入っているから、仕方がないといえばそうだけど。

「まぁ、それより。ワタシはこれから、「ルミネ」の町へ行くんだ。」

「ルミネ…って、真っ暗なダンジョンのある所か?まさか…」

「そう、そのダンジョンが目的。」

「ダンジョンなんて…危ないだろ!?死んだらどうするんだよ?」

「…死ぬことを考慮に入れる馬鹿は居ない。」

「いやいや、ダンジョンだぞ?中で何かあっても誰も助けてくれない、そんな所へ…」

「ストップ。」

ここで母様が制止に入る。

「理解出来ないのは分かります。でも、冒険者というものはそういうものですから…。」

流石、称号持ちまで上り詰めた母様はよく分かっている。ちなみに、母様はギルド会員ランクA、レベル71の猛者なんだよね。そんな母様の一言で、兄様も納得してくれるといいけど…

「じゃあ、母様はシエルが死んでもいいって言うのか!?」

あ、ダメだ。兄様、熱くなりすぎちゃってる。こうなると止まらない人なんだよね、昔から。

「そうですね…それは困りますね。では…」

母様は懐から何かを取り出し、ワタシに渡してきた。

「これは…?」

「私が昔使っていた、アーティファクトです。」

「おっと、それ、私が作ったモノじゃないか?」

父様が反応する。

「そうです。私はもう使わないモノなので…これをシエル、貴女にあげます。」

「え、でも母様…それは大事なモノなんじゃ?」

「そうですね…。でも、私にとっては貴女も同じくらい大事なのですよ。だから、私達の愛だと思って、それを持っていきなさい。」

「それはな…私が初めて自作したアーティファクトなんだ。所持者が大きなダメージを受けた時、「ヒール」「キュア」の効果がそれぞれ発動するようになっている。ただし、1回発動すると魔力のチャージが必要で、再発動するまで1日くらいはかかる。」

ワタシは魔王のスキル「骨董鑑定」を持っているので、そのアーティファクトの能力はすぐに分かったが、父様は律儀に説明してくれた。

【ハートのペンダントv1:ランクC+】

一般市場に出回っているアーティファクトは大体がランクD付近であることが多い。初めて作った、のにランクC+のモノを作れてしまう父様は只者ではない。

「シエルの身に危険が迫った時には、これが力を発揮してくれるでしょう。」

「ありがとう、母様。これで兄様も文句ないよね?」

「あ、あぁ…。」

熱が冷めてきた兄様に、私は告げる。

「ワタシの事、心配してくれてありがとう。でも、ワタシはワタシの道を往きたい。それがどんな結末を招くとしても。」

「…分かった。」




視点:モネ


「非人」を始末したい。私は隣人にそう言った。

「それは賛成です!あいつ、最近は私の縄張りに侵入してくるどころか、私の根を傷つける事もあるんです!あんな奴ぶっ飛ばしてしまいたいです!」

この子…エリサは、世にも珍しい、地下生活を送るアルラウネである。

植物系の魔物は本来、日光などの条件が整った所でしか生きられないが、彼女は自ら狩りを行い、獲物を養分とするストロングスタイルで地下で生き永らえている。十年前、このダンジョンに来た私に、縄張りの一部を譲ってくれた先輩でもある。今では拡張性に長けた私の巣により、私の縄張りの方が広くなっているが。

そんなこともあり、私がダンジョン内で一番仲がいいのがエリサなのだ。

「エミルスはどう思う?」

「エリサさんだけじゃなく、姉貴も被害を受けてるだろ?オレもエリサさんに賛成だ!」

「…そうね。私もそろそろ潮時だと思っていたわ。」


私は、七色の第五席、「虫」の称号を持つ、…今はアラクネの、モネ。

私を敵に回した事、後悔しなさい。


17/50話です。

前回の後書きで匂わせたエリサの名前の由来、正解は「ハエトリグサ」でした。

さて、それはいいんだけど…。

やべぇ、全然書き進んで無いんだが…!?

酷い時なんて、2行書いて、その日の執筆終わり、って時もありました。そんなんで完成するのか?この作品。自分が一番心配になってきています。

でも、今後の展開の見通しが少し立ったというのはいい進捗です。大枠以外はフィーリングで展開を決めているので、帳尻合わせで何日も詰まる事が結構ありますが、そこを一旦解消できそうです。

この作品は誰よりも私が完成を待ち望んでいます。明日はどのくらい書けるかな。

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