第十話:高嶺の花
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:1671
視点:ヴァイス
「さて、あの悪魔は…レベル75前後、俺達なら、やれるよな。」
「当然です!」
いつものように、シュヴァルツに前線を任せ、私は後方支援に回る。
悪魔は禍々しい怪物のような姿に変貌し、三つの口から火を吐き、彼らを付け狙う。
悪魔は召喚者の望む姿に変化すると言われているが、あの男はこんなバケモノを望んだのか…。
私は日属性・浄化魔法の「ホーリーライト」を準備する。
それより、気になるのはあの少年の使っていた魔法だ。「シャドウレイ」「ヘルゲート」どちらも、知らない魔法だ。もしかして、私の知らない属性がある?
だとすると、シュヴァルツが使える魔法があるかも…。魔法無し、ただ技術とスキルだけでここまでやってきた彼にも?
まぁ、それはこの悪魔を倒した後で考える話だ。
シュヴァルツの耐久力、回避力は信用しているが、あまり時間をかけている暇はない。
さぁ、滅びなさい。
「ホーリーライト!!」
金色の光が悪魔を貫く。
「ガガガ、グゴゴゴゴ!」
悪魔は物凄い叫び声を上げて苦しむ。
「…マジかよ!?」
「あれを喰らったのにまだ動けるのですか…!」
悪魔は錯乱した様子を見せながらも、こちらを攻撃してくる。
素体のあの男の防御力が高すぎたから、倒しきれなかったのだろう。
「ホーリーライト」は一撃必殺級の火力を持つが、連発は難しい。それにシュヴァルツだって、いつまでも耐えられるわけではない。どこかで限界が来る。
不味い…!
視点:シエル
「シエル様、顔色が…。」
「ワタシは大丈夫。それより、あの悪魔…」
「シエルさん!大丈夫?」
「エクラ君…そっちこそ大丈夫なの?」
「ちょっと力が抜ける感じがするけど…大丈夫だよ。あの悪魔は、僕達を狙っている。なら、バラバラでいるより纏まっていた方があの二人も戦いやすいと思って。」
「でも、お二方の力をもってしても少し押されているようです…。」
「そうだね。じゃあさ、キセキに一つ指示、というかお願いなんだけど…。」
「何ですか?」
視点:キセキ
私の現在のレベルは46。
でもこれは出力を抑えている、というか抑えられている「正体隠蔽」形態での数値だ。本来のレベルは…
72くらいかな?多分前より少し上がっているはず。
これなら、多少は助けになるはず…!
「助太刀します、ヴァイスさん、シュヴァルツさん!」
「えっ…?」
「お前は…なんだかわからんが、レベル70は超えてるっぽいな?助けてくれ!」
「て…天使様!?」
「えっ、天使!?」
「堕天使ですけどね!シエル様からの指示で真の姿を開放しました。この姿じゃないと全力を出せないので!」
「あぁ…本物なのですね…!」
そう、私は天使。この種族は私に力を与えると共に、呪いでもあった。
「今はそれはいいから、アイツにあと少しだけダメージを与えてくれ!もうアイツは虫の息だが、俺達に有効打が無いんだ…。」
「わっかりました!」
さっきはあの男にすら攻撃が通らなかったけど、フルパワーを出せる今なら大丈夫。
「アア…オマエ…ナゼ…」
悪魔が何か喚いているが、気にしない。
「ホーリーライト…っ!」
「マテ…グアアアアアア!?」
二発目の「ホーリーライト」が直撃した悪魔は、素体と共に綺麗さっぱり消え去った。
私は床に落ちていた半透明の黒い塊を拾う。
これは「契約の魔塊」。召喚された悪魔が契約を果たせず倒された時、その場に落とす宝石。
綺麗な物は高値で取引されるというが…。
「嗚呼、天使様、その御姿、もっと拝見していたい…!」
「すまん、こいつ、信仰心が厚いのはいいんだが、時々こうなるんだ。」
「あの、すいません、これ貰って行ってもいいですか?」
私は魔塊を二人に見せる。
「いいぞ。俺達は要らないからな。」
「天使様のお望みとあらば。」
「あー、あと、この姿の事は秘密にしてくれると…。観客の皆さんも!」
「おう!格好良かったぜ!」
「感動しました!」
赤服青服の二人も、受付のお姉さんも、了承してくれた。多分あの人達なら漏らす事はしないはず。
そして私は魔塊を握りしめ、主の元へと歩み寄る。
…それにしても、あの悪魔…。私を見て狼狽えていたようだったけど、何だったんだろう?
10/50話です。
ボス討伐で一件落着、といったところでしょうか。
サラッと出てきた設定、悪魔は召喚者の望む姿に変化する…。
浪漫がありませんか?
悪魔召喚から始まる物語もあるくらいですし、悪魔って魅力的なモノだと思うんです。
物語は一旦ここで区切りとなります。続きは書いている途中です。