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8.孤立 ②

「もしかして、前よりも状況悪くなってる?」


一週間前に自分を機転を利かせて助けてくれた人に、再び駅で会った時にそう言われてしまい、容子は力なく頷くしかなかった。


「あいつ、正気か?」

「···とうに正気ではないと思います」


明らかに憔悴している容子を見ながら、修司は深い嘆息を漏らした。


本日も懲りずに駅まで来ているあの男をチラリと確認すると、この前みたいにバス停まで送るよと容子の手を引いて修司は歩き出した。


「なんなら、家まで送ろうか?」


ストーカーに聞こえないように小さく囁いた。

容子の反応は鈍く、相当疲弊しているようだった。


これはもう精神的限界が近いのではないかと心配になった。


「ちゃんと眠れている?」

「······」

容子は何も応えない。


かん高い癇に触る声で通りすぎる容子の名を呼んでいた男は、そのまま二人の後を追って来た。



一度詳しい話を聞くために、取りあえずバス停の待合室のベンチに容子を座らせようと周囲を見回した。


本来容子が利用しているバス停にはベンチがなかったために、帰る方向とは逆の、反対車線のバス停のベンチに二人は腰を下ろした。


とたんに粘着的な声が、どこへ行くつもりなのと問いかけてきた。


「どこへ行こうがお前に全く関係ないんだから、帰れよ。そして二度と彼女に近づくな!」


修司は語気を強めながら、それ以上近寄らせないように彼を睨んだ。


一瞬怯んだが、男はそれでも容子の名を途中まで口にしたが、今度は容子がそれを遮るように叫んだ。


「婚約者がいるのに、一体なにをしているんですか!あの人は今だってあなたの迎えを待っていますよ。 私が婚約者だったら、あなたなんて······半殺しよ!!」


およそ彼女のイメージからは想像できないワードが飛び出して、修司まで「半殺し?!」と、鸚鵡返しに呟いてしまった。


容子の口にしたあまりに不似合いな言葉の破壊力の強さに、不謹慎だったが耐えきれず笑いが込み上げた。


「ははははっ」

宵闇に修司の笑い声が響いた。


「ははっ······いいね、半殺し」


ツボにはまったのか、ひとしきり笑いが止まらなかった。


笑いが収まると、修司は怒気を含んだ声でまくし立てた。


「あんたがなぜ今まで警察に通報されなかったか知っているか?

彼女は優しいから、あんたの婚約者やあんたの家族の世間体まで心配してあげているからだよ。

本当に、嫌になるくらい優しいよな。

その彼女が半殺しって言うことの重みを、お前は解ってるのか?

俺なら、半殺しなんて生温いものではまず済まないけどな。

今日だってお前を婚約者が待っているんだろ? だったら、もう行けよ」


言い終わると同時に、修司は彼を威嚇するために指の関節を鳴らしながら立ち上がった。


流石に後退りして、暗くなった道を男は引き返して行った。



「大丈夫? 帰れる?送って行くけど」


そう言って修司が振り返ると、容子は力尽きたのか、ベンチに腰かけたまま眠りに落ちていた。

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