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35.結 ④

立花沙羅は入院中の夫に離婚届を送りつけた。



夫を階段から突き落としたのは自分だと妻は言い、夫は酒に酔って自分で転落したと主張した。


目撃者もいなかったことから、自分で転落したということで処理された。



容子は、立花沙羅からの呪いのカードも、砂入りバッグで襲撃されたことも不問にし、不起訴処分にしてもらえるように懇願した。


彼女が置かれていた状況はだいたい知っていたし、心情も理解できたからだ。


それに、容子がつきまといを警察に相談するのが遅かったために、今回の事件を引き起こしてしまう一因になったと自覚しているからでもあった。


立花沙羅の両親は容子に平謝りに謝り、不起訴になるよう願い出てくれたことを涙ながらに感謝した。



ストーカー男は離婚に同意し、憑き物が落ちたかのように、宮森容子には二度と近づきませんと自ら接近禁止を誓った。


これは妻から本当に半殺しの目に遭ったからなのだろうか。

妻が容子へ呪いのカードを送り付けていたこと、容子まで襲撃した事実に、ようやく自分の愚行に気がついたのかもしれない。


ストーカーを煽り唆したお局様は、警察にも事情を聞かれることになった。

あまりにも非常識かつ悪辣であるとして退職に追い込まれた。

それが原因かはわからないが、夫にも離縁されたということだった。



沙羅が幼馴染みの亮と婚約するのはもう少し先のことになる。




「こんなに何もかもがバタバタと解決してしまうなんて思いませんでした」

「なのに、なんか不服そうなのはなんで?」


容子のそんな表情を見て修司が聞いた。


「もっと最悪のバッドエンドも想定していたから、悲壮な思いで相当の覚悟をしていたんですよ色々」

「悲壮隠遁計画?」

「そうです」

結果次第では、自分は消える計画を容子が練っているだろうとは予想していたが、その通りだったので修司は苦笑した。


「でも今回は保留にしておいて良かったです。じゃないと、修司さんをトラウマのどん底に突き落としてましたから」

「ああ、助かったよ。誰かさんが無茶して行方くらましたりしたら、身が持たないからな」

「安心して下さい、私、消える時はちゃんと挨拶してから消えますから」

容子は清々しい目をして言った。

「挨拶なんかされた日には、全力で止めるけどな」

はあ、まったくと修司は嘆息した。


「今回の件で容子に罪があるなら、既にその報いはとっくに受けてるだろ?

第一、本来なら彼女の恨みや殺意の矛先はお局様か不実な夫へだよな?」

「···普通はそうですね」

「仮にまだそれでも報いが足りないのならば、その時は俺と一緒にその報いを受ければいいだけだ。

容子だけが何もかも捨てて自分一人きりで報いを受けなきゃならないなんてことはないんだよ。それはこの先もずっとそうだ」


修司は、わかってくれと懇願するような眼差しを容子に向けた。


「······修司さんは、本当にそれでいいのですか? 」

「他の奴はどうか知らないけど、俺はそれでかまわないよ。だから自分の責任を感じて消えようなんて、もうしないでくれ」


容子はうつむいていた顔をあげ、遠くを見つめるように言った。


「······佐和さんにも、そう伝えることができればよかったですね」

もしストーカーの被害に遭っていたならば、迷わず先送りにせず、楽観視せずに、迅速に警察に相談しましょう。

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