34.結 ②
容子と修司はこれまでのストーカー被害とそこから発生した二人の関係の経緯、ストーカーの妻の状況をなんとか説明したのだが、容子の両親は本当にそんなことがあったのか半信半疑だった。
容子宛の呪いのカード、砂を利用した凶器の画像を見せると眉をひそめ、ようやくどんな事態だったかを理解した。
黒ずくめの人物のことはまだ特定できないが、ストーカー行為は警察にも知られたこと、ストーカー自身が現在は怪我をして入院中ということで、一歩前進、今後危機は回避できる見込みがあるという認識にはなってくれた。
容子の父は、知らなかったとは言え、自分は単身赴任で目が届かず、力になれずすまなかったと詫びた。
そして自分の代わりに対応し娘を護ってくれた修司にいたく感謝した。
修司がみつわ荘のかつての客であることを知ると、母は「まあっ、まあっ、まあっ」と、狂喜乱舞したのだが、それはほぼ容子が予想した通りの反応だった。
馴染みのある小由留木好きの父は、修司が小由留木生まれの小由留木育ちと知り、より親近感を持ってくれたようだ。
生まれた産院や檀家の寺も同じ等の共通点をいくつか聞くと、やはり両親も驚いていた。
母は容子の子供の頃や学生時代、みつわ荘の写真等を引っ張り出して来た。
これも想定内。
例の着ぶくれした浴衣姿の容子の写真を見つけると、修司は笑いを必死に堪えていた。
そして、修司があのカタツムリの赤ちゃんエピソードの少年だと容子が教えると「えええっ? こんな偶然ってあるの」と母は感激していた。
修司が容子とは結婚を前提に交際している旨を伝えると、「容子をどうかよろしく」と父の方から頭を下げて来るという、ほぼ了承をもらった形になった。
結婚承諾の挨拶もそんなに形式張らなくていいからという譲歩までしてくれた。
父自身も転勤族だったので、転勤間際の時間の無い修司の状況も理解できたのだろう。
それで仙台にはいつから行くのかと問われ、一週間後ですと答えると、容子はどうするのかと容子自身に父は聞いて来た。
「今はまだ事後処理が残っているので、それが落ち着いたらすぐにでも行こうと思います」
「そうか、わかった。それじゃあ色々準備しないとな」
既に私が仙台に行く前提でいてくれるのはありがたかった。
両親への事情説明だけで済ます筈だったのが、いつの間にか結婚承諾の流れとなり、ほぼ問題なく話しはまとまった。
「はああ、やっと終わった」
車に戻って来た修司はネクタイを緩め脱力した。
「今日は、本当にありがとうございました」
「これで結婚しなかったら、俺は親父さんに殺されそうだな」
「結婚しない選択肢を潰されてしまったというか···」
はははっと修司は笑った。
「まあ、そういうことで、よろしく」
「どうぞよしなに」
「ぷっ、容子はそういう言い回しがスラスラ出てくるよな」
「実はサバ読んでまして、中身は百歳を越えているんですよ」
まったく、どこからそんな設定を思いつくのか。
「百歳のカトリーヌ?」
「マーガレットですよ」
「なんでみんな外国人なんだ」
「出稼ぎなんです」
修司は、容子との生活は飽きそうにないなと心底思った。




