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29.悪意 ②

凛子は修司から連絡を受け、容子を病院に連れていくために迎えに来た。


「大丈夫? 容子ちゃん」

「お世話かけてすみません」



ここまで来てしまったら警察に頼るしかないだろうと判断し、警察にこれまでの事情を伝え、送られて来た呪いのカードも提出した。


黒ずくめの人物が落として行ったのは、ブランドロゴがほどこされた布製の巾着型バッグの中に、砂をビニール袋にみっちり詰めたものだった。


修司があの時見たのは、黒ずくめの人物がそれを振り回しながら容子に背後から近寄って行く姿だった。


女性のようだったと言う容子に、修司はさらに戦慄した。


計画的に誰かが容子を狙ったものなのか、たまたまこの日居合わせた通り魔のような人物によるものかは、まだわからない。


一歩間違えれば、惨事だった筈だ。


最悪は命すら落とてもおかしくない。



女性ではなくて、子供や小柄な男性ということもありますから断定はできませんねということになった。


当分はくれぐれも身辺にお気をつけ下さいと指示された。



容子は、修司の伏せろという指示に慌てて従った。その勢いで鼻をベンチの背もたれの部分に強打してしまった。

それが原因で鼻血を出したのだった。


目の前で容子が血で服を染めて行く様子に、修司は生きた心地がしないほどに凍りついていた。


「これって···もしかして鼻血なんでしょうか?」


容子が暢気な声でそう尋ねたので、一気に修司は正気に引き戻された。


「伏せた時に鼻を打ってしまって。鼻血を出したことが今までないからどうやって止めるのかわからなくて······血って、しょっぱいものなんですね」


そんな容子の言葉に拍子抜けしつつ安堵したのだった。


念のため病院で処置してもらい、処置後に警察へ出向いた。

この日は修司の実家に泊まることになった。


血で汚れた服まで洗濯してもらい、容子は恐縮した。

「凛子さん、色々お手数かけてすみません」

「いいのよ、大変だったわね」

「ようこ、平気?」

容子が襲撃されたことは純には内緒だ。

「大丈夫ですよ、今日は出血大サービスでした」


純は容子の言葉に安心したようだった。


「あんたは大丈夫なの?」凛子が修司に問うと「まあ、なんとか」と答えた。


容子は先程の修司のいつもと違う様子が気がかりだった。


「厄介ね、あんたのトラウマは」

「姉さん、それは···」

「トラウマ?」

「それは本人からゆっくり聞いてみて。あなた達はもうじき夫婦なんだから同じ部屋でいいわよね」


修司の部屋に布団を並べて敷きながら凛子はそう言った。

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